Special Thanks

当ブログは、広尾サラブレッド倶楽部株式会社様のご厚意により、同倶楽部の所有する競走馬の写真及びWebサイト記載情報の転載許可を頂いております。

2021年9月26日日曜日

【書評】水上学著「疑え、競馬常識」~ともに考える、という著者の想いを体現する良書

 少し前の刊行ですが、血統予想家としてお馴染み水上学氏の著書「疑え、競馬常識」(秀和システム刊)を購入、読了しました。

 本書のテーマは「競馬格言のウソ・ホントをデータで紐解き、馬券作戦に役立てる術を考える」というもので、

  • 「夏は牝馬」
  • 「大型馬の休み明けは割引」
  • 「最終レースは荒れる」
など、噂レベルから定説として確立しつつある「格言」と呼ばれる類のものを1つ1つ取り上げてゆく内容になっています。

 もちろん、それら自体は「TARGETで調べりゃわかること」の集合体ですし、「荒れる」と言っても単勝2~30倍の穴人気レベルから単勝万馬券クラスの全くの無印まであるわけで想像する尺度は人それぞれですが、読了してみて「なんとなく気になっていたこと」を改めて考えさせてくれるという意味において、競馬への理解を深める良書であると感じました。

 あとしばしば「著名な予想家でさえ豪語しているが、データからは全くのウソである」といった話題も出てきており「あぁ、あの専門紙の○○さんかな」と思えるような痛快な指摘も随所に散りばめられており、読んでいてなかなか胸のすくことも多い一冊でした。


 それぞれの詳らかな内容は本書に譲るとして、自分が本書において特に良いなと思った点は下記2点です。


①読者と共に考える、というスタイル

 評論家、予想家の中には「お前ら知らないだろうけど真実はこう、俺が教えてやるよ」的なスタンスの人も少なくないと感じます。それは競馬予想というものがまだアナログでロマンとともに語られていた20世紀には少なく、何もかもがデータ化され可視化され、誰もが簡単に発信を行えるようになった現代において鮮明になってきたと感じます。

 それは予想手法の進化あるいは深化によって新たな観点や価値観の発掘によるところが大きいのですが、自らの理論の追及に励むあまり、誰とは言いませんがどうも一般のファンを見下しているような物言いが目につく人もいます。マイケル・サンデル教授の言葉を借りれば「行き過ぎた実力主義」、ゆがんだメリトクラシー(G1TCの馬ではない)がこの世界にもはびこっているようにも感じています。

 水上氏と言えば自分が毎週視聴している「競馬予想TV!」(フジテレビONE)をはじめテレビ、ラジオ、Webと盛んに活躍する著名人で、表に出る機会が多い分有名税を払わされることも少なくないはずです。著名な予想家が横柄な物言いに陥りがちなのは、本質を顧みない稚拙な反論に接する機会が増えうんざりしたが故の心の動きという要因もあるかと思いますが、この本ではしばしば「調べたけど原因はわからない、なのでこれ以上は無理に論評しません」というシーンが出てきており、凡そ予想を生業とする人のプライドがいい意味で感じられないのが良いところだと考えます。

 例えば、本書の項目の一つに「海外遠征帰りの馬は軽視すべきか」というテーマがありました。結果として「海外遠征する馬はそもそも一流馬に限られ、総じて国内のレースで好成績を収めているので必要以上に軽視する必要はない」というデータが出ていたのですが「香港帰りだけは成績が悪い、しかし理由はわからない」と締めくくられています。

 予想家とファンという立場の違いをつなぐのが本書であるならば本来、予想家側の結論なりを誇示して締めくくりたいはずのところ、氏は無理にこじつけをしないで読者の想像、研究にゆだねるスタイルを取っています。わからないことは書かない、のではなく、わからないことを皆で考えるという水上氏の姿勢は「実るほど頭が下がる稲穂かな」という言葉を思い出さずにはいられません。

 これは完全に余談ですが、2年ほど前に東京競馬場に出かけた時にラジオ日本の出番の合間と思われる水上氏を目撃したことがありました。売店でコーヒーとサンドイッチを買って関係者通路に消えていったので声もかけられませんでしたが、何というか、メディア露出の多い人にありがちな威圧感めいたものが無く、いかにも人に好かれそうなオーラの持ち主だなと感じたことを覚えています。ある意味人となりがそのまま表れた著書であると思えばそれも納得です。


②「競馬の市民権」を考える視点

 これはよくツイッターなどで須田鷹雄氏も触れていますが、日本社会における競馬の見られ方というものについて「競馬の市民権を疑え」というテーマで「こっち側」にいる人間としても考えてみたい、というコラムが本書には掲載されています(著者が連載していた「競馬の天才!」内コラムの転載)。

 ご存知の通り、中央競馬は農林水産省の管轄で施行されており、利益は国庫に還元され様々な事業の財源となっています。元々馬券販売は宝くじなどと同様に、戦費の捻出や復興財源の確保、自治体における財政貢献を見込んで行われ公共性の高い事業でありますが、やはり一般的にはギャンブルの類であることは間違いなく、依存症問題などとセットでマイナスイメージで語られることの多いレジャーでもあります。

 その点、売り上げの一部が日本財団の財源となり福祉車両の購入など公益性の高い使途に充てられているボートレースは早くからそうした広報活動を積極的に展開していました。JRAがこの手のプロモーションを本格化させたのはコロナ渦になって以降で、開催継続の正当性や意義をアピールする必要性に駆られての措置と考えれば、JKA(競輪・オートレースの統括団体)と並んでこれでも遅いくらいでした(本来なら東日本大震災の時からこのようにすべきだった)。

 水上氏が本書で語っているのは主に「依存症を生むリスクを抱えるレジャーが一般社会にどこまで受け入れられているのか、たまには立ち止まって考えるべきでは」という視点でありますが、本質的には個人(=経済力や可処分所得を顧みず購入し身を窶してしまう人)の問題であって統括団体としてできることは限られるとも述べています。別に○○をすべき、という提言めいたものも無く、我々ファン一人一人が顧みる機会を持つ必要性に触れていますが、今の時代だからこそこの視点を大事にしたいと感じました。

 考えてみれば、体毛が白かったり馬産界ではレアな九州産というだけで一般ニュースに取り上げられる現代は、競馬ファンにとってはとても恵まれていると言えるでしょう。自分の好きなことにプライドを持つ、ということは大事ですが、市民権を得た趣味だと勘違いして大上段に構えてしまうと思わぬところから矢が飛んできたりするわけで、それは競馬をはじめとした公営競技のファンには特に付きまとう視点だと思います。かと言って変に縮こまったりへりくだる必要もないのですが。

 毎週楽しめていることが当たり前だと思わない、我々の愛する趣味は、様々なバランスと多くの人の努力によって成り立っている世界なんだということを自認する、この項からはそんなメッセージが聞こえてくるようでした。


 丁度昨今、単勝1倍台の馬がコロッと負けるケースが頻発しています。「当たり前を疑う」という本書のテーマが、簡単そうで難しいことなんだと、現実に改めて気づかされます。


【9/26(日)予想】オールカマーの全頭評価&ねらい目レース(神戸新聞杯)

■中山11R

[1]①ウインマリリン(横山武)

 伸びずバテずが身上の馬で、前走の天皇賞(春)もじっとしていたが故の⑤着。③着争いとは0.4離れていましたし、明らかな格下が半分を占めるメンバー構成では相対的にこのくらいの着順でないと辻褄も合いません。但しその分横山武Jの積極騎乗が嵌るタイプで、立ち回りが要求される中山で絶好の1番枠と来れば押さえは必要でしょう。

[1]②ウインキートス(丹内)

 目黒記念圧勝の余勢を駆って参戦した札幌記念では、3角で進出するタイミングを窺っていたところブラストワンピースが捲りながら内に切れ込んできたために一旦引かざるを得ませんでした。じわっと進出するこの馬の形を作れなかった上、気持ちも切れてしまったのかそこからズルズルと後退。ただそれにしても目黒記念のパフォーマンスを考えれば止まり過ぎ。やはり本質的に前半60秒前後のペースではお釣りを残せなかったと見るべきで、強力な先行馬もいるここでは恵まれは望みにくく。

[2]③セダブリランテス(石川)

 ここ2戦を含め、着外に敗れた3回はいずれもワンターンのコース。中山では18年の金杯でウインブライトを撃破しており、その前のアルゼンチン共和国杯でもスワーヴリチャードの0.6差③着とG1級との好走経験を有するなど、実績ではG1馬2頭に引けを取りません。休み休みの起用で7歳秋にしてこれがまだ10戦目ですが、今回は好走パターンのCW追いで最終調整しており、坂路調整だった過去2戦からの上昇は明らかで今年では一番の出来と言えるでしょう。ポジションを取りたい馬はいますが飛ばすタイプではなく、61秒ぐらいで運べそうなこの舞台なら通用があっても驚けません。

[2]④アドマイヤアルバ(柴田善)

 2走前の目黒記念はウインキートス同様異次元のスローペースに助けられての好走で、宝塚記念で前半が60.0で流れるといつもの通りポジションを取れませんでした。現状ではOP特別レベルでようやく掲示板に載れるかという馬で、ここで通用する根拠には乏しいです。

[3]⑤ソッサスブレイ(柴田大)

 関屋記念の内容を見れば重賞でのパンチ不足は明らか。関越Sのように良いポジションで最後に進路を作れれば一瞬の脚は持っていますが、相手も強くなりよほど作戦を工夫しないことには見せ場は作りにくいかと…

[3]⑥ランブリングアレー(戸崎)

 前走のヴィクトリアマイルでは道中後方のインでじっと構え、直線では外目を主張して進路を確保。丁度ディアンドルの通っていたあたりが伸びる/伸びないの境目で、キレで劣ると見られていた同馬をうまく導いた吉田隼Jの好騎乗もありました。

 しかしもう一つ好走要因としてあげたいのが「休み明けローテ」。過去2か月以上の間隔を空けて臨んだレースでは(2,2,1,0)とパーフェクトに走れており、昨秋のカシオペアSも2か月半ぶりの実戦でボッケリーニらを一蹴。今回は4か月半ぶりのレースですが中間入念に乗られ、最終追いではCWで馬なりで49.4-12.2と抜群の時計をマーク。本来中山向きで条件も相手関係も良くなるここでなら上位評価は必至でしょう。

[4]⑦ブレステイキング(石橋脩→内田博)

 このコースでは18年にセントライト記念④着があるものの、母シユーマの兄弟は慢性的に足下に不安を抱えこの馬以外の5頭の兄弟のうち4頭が半年以上の休養歴を持っています(1頭は1戦で引退)。上には準OPのヘリファルテが居ましたが、3度にわたる長期休養を余儀なくされ結局4歳秋の本栖湖特別が最後の勝利に。この馬も年明けに約7か月ぶりに復帰するも1秒以上負けており、ピークは過ぎたと判断せざるを得ません。

[4]⑧サトノソルタス(大野)

 前走鳴尾記念時の見解がこちら。

 この馬は休み明けでこそ走るタイプで、2か月以上の間隔を開けたレースは(1,2,2,2)に対しそれ以外は(0,0,0,4)。後者に該当する今回は前走以上のパフォーマンスは望みにくく、メンバーも落ちるわけではないここでは大きな期待は懸け難く。

 結果的に中3週の鳴尾記念は道中4番手を進むも伸びきれず1.0差の⑦着。実績で言えば昨年の金鯱賞でサートゥルナーリアの0.3差③着がありますが、前半63.6秒超スローを3番手追走でしたからむしろ差される方がおかしいレベル(勝ち馬は強いですが)。恵まれてこの程度となると、休み明けでも買えても紐程度でしょうか。

[5]⑨マウントゴールド(岩田望)

 前走の七夕賞は結果的に行ったもの勝ちのレースで、そこで1番枠を引いて4番手を進んで4着では本質的な価値は見出せません。重賞になると今一つ信頼度が落ちる岩田望Jの手綱さばきに期待するにしては先行勢が揃いすぎた印象で。

[5]⑩キングオブコージ(横山典)

 約1年ぶり。目黒記念勝ちから大箱コース得意の印象ありますが、中山は2戦2勝で立ち回りの良さを活かしてひと足で決めるレースも対応可能です。調教も休養前同様にCWでの最終追いを消化し49.8-118の好時計で動けてもいます。

 但しやはり中身がどうかという点は気になるのと、横山典Jは近年特に長欠明けの馬で無理をさせない傾向が強いのがマイナス要素です。



 上記は同騎手がデビュー以来、中49週以上で出走した馬に騎乗した際の成績です。一見すると悪くないように見えますが10勝のうち8勝は2001年以前のもので、最後に馬券内に入ったのは2015年まで遡ります。特に近年は馬本位の騎乗スタイルで、位置を無理に取りに行かないor馬と喧嘩しないことを優先するが故まるで勝負なならずに帰ってくることもしばしば(それは長欠明けの馬に限りませんが…)。ここも賞金自体は足りている故、ひと叩きして天皇賞orアル共→JCというのが理想ではないかと見ます。

[6]⑪グローリーヴェイズ(M.デムーロ)

 香港ヴァーズ勝利、昨年のJCでも3強に肉薄しての⑤着と実力は現役トップクラスであるものの、メジロ牝系らしくエンジンの掛かりはワンテンポ遅い印象で東京や京都といった大箱コースで紛れなしの勝負でこそ強さを発揮できるタイプなのも事実。事実、今年の金鯱賞ではスローに持ち込まれギベオンの逃げ切りを許し、阪神内回りの宝塚記念では大敗。トリッキーなこのコースでは紛れの憂き目に遭う可能性が高いと見ます。

[6]⑫レイパパレ(川田)

 前走の宝塚記念はそう厳しい流れではなかったものの、回復途上の馬場コンディションもあってかゴール前でユニコーンライオンに差し返されての3着。やはり阪神内回りで雨が残るとディープ系は厳しく、その中ではよく残した方と言えるかもしれません。

 ここは飛ばす馬もおらず61秒~62秒くらいの運びが出来そうですが、前走の物足りなさが56kgという斤量なのか2200mという距離なのかという可能性も否定できず、そのいずれもが再現となる今回は試金石と言えるでしょう。

[7]⑬ゴールドギア(田辺)

 前走の目黒記念はスローペースを見越し早めの進出を見せるも先行勢の返り討ちに遭って1.1差の⑤着。レースの上りが32.8となっては追い込み馬に厳しい展開だったことは事実で致し方ないにしても、2走前にメトロポリタンSを勝った時にCWで50秒、51秒を連発していたのと比べると今回の調教時計は二回りは足りず、目標はやはりアル共でしょう。

[7]⑭アールスター(長岡)

 連覇を狙った小倉記念は感冒により取り消し。立て直された今回ですが、その小倉記念の直前同様に坂路で52秒台をマークし、OP昇級後では最速の時計を出しています。但し脚質的にはどうしても展開の利がないと難しいタイプにつき、嵌り待ちの騎乗を得意とする長岡Jとの組み合わせでは信頼は置きにくいです。

[8]⑮ロザムール(三浦)

 重賞で2度の波乱を演出していますが、そのいずれもが雨の影響の残る特殊なコンディションでした。脚元が悪くても変わらずに走れるタイプであるのでそのような状態では相対的に優位に立てますが、降雨予想のない今回は望み薄でしょう。

[8]⑯ステイフーリッシュ(横山和)

 前走は心房細動で無念の競走中止。この中間は久々という点も加味し、心肺機能の強化を図ってしっかり負荷をかけてきました。ただ、調教素人の意見としては一杯に追われた割に最後の1Fは動きがやや緩慢に映り、神戸新聞杯に騎乗のない藤岡佑Jが遠征することなくテン乗りの横山和Jを配した点からも、ここを叩いて次走以降が矢作厩舎の本領発揮と見るべきでしょうか。

<予想>
◎セダブリランテス
○ランブリングアレー
▲レイパパレ
△グローリーヴェイズ
△ウインマリリン


■中京11R イクスプロージョン

 母ファシネイションは3代母グレースアドマイヤから続く名牝系なのですが、この一族は中京が得意。兄アプルーヴァル(牡6、父オルフェーヴル)は全3勝が中京芝1400mで挙げたもので、近親にはフランツ(ケフェウスS②着)、エスポワール(シンガポールTC賞)、アリストテレス(小牧特別)、アールドヴィーヴル(ローズS③着)と中京コースで好走した馬がズラリと揃います。

 中京に限らず、東京や阪神などでもよく好走する一族なのですが共通する特徴は「左回りや坂のあるコースが得意」という点。グレースアドマイヤは父トニービン、母は日本で大成功を収めた繁殖として名高いバレークイーンという血統で「エプソムダービーモデル」として上記コースを得意とする馬が多数出てきたのも頷けます。

 グレースアドマイヤの後継繁殖となった本場の2代母グローリアスデイズ(フローラS②着など)が父にサンデーを持つ関係でしばらく父はキンカメ系などに限られ、中距離以上の適性馬が多い傾向にありましたが、本馬の父オルフェーヴルやエピファネイアなど「サンデーの孫」が種牡馬入りしたことでサンデー3×3の配合が可能になり、中距離以下の活躍馬も出始めています。

 閑話休題…

 同馬のオーナーの近藤英子氏と言えば、言わずと知れた「アドマイヤ」の故・近藤利一氏の前妻ですが、セレクトセールで高額馬を競り落とす利一氏とは対照的に英子氏は自らの牝系を大事にし、配合相手などの選定を自ら行ったうえでそのほとんどを自己所有しています。同じ基礎牝馬をベースにしている以上、所有馬の傾向が似通るのは当然と言えます。そういえば利一氏の持ち馬の権利を継承した後妻の旬子氏が、某税理士に所有馬を売り渡すという噂はどうなっちゃったんですかね(すっとぼけ)

 イクスプロージョンに話を戻すと、中京芝2200mで③②①着。特に2走前の春日井特別では2番手追走から2.11.9の好タイムでの勝利でした。今年この条件で勝ちタイムが2分12秒を切ったのはこのレースを含め4レースしかなく、他3つは日経新春杯・京都新聞杯の両重賞と2勝クラスの長良川特別と格上戦ばかり。加えて上りがかかりやすい中京で自身の上りが35秒を切った勝ち馬はイクスプロージョンのみで、差しの効く舞台にして2番手から押し切った内容も評価できこの舞台への適性は相当高いと見込まれます。

 当然、今回はダービー馬シャフリヤールをめぐる争いなわけで、ダービー3着のステラヴェローチェを含めこの2頭が人気の中心になることは疑いようはありません。これが例年通り阪神芝2400mであれば波乱の余地はあまりないと思いますが、小頭数でめぼしい先行馬も居ない中でかわいがられるようなことがあれば…上記2頭と違って賞金加算・権利獲得を目指すイクスプロージョンが積極騎乗で一泡吹かせるシーンがあっても驚けません。

2021年9月25日土曜日

【9/25(土)予想】

■中山4R ゼログラヴィティ

 前走の小樽特別(札幌・芝1200m)は前半3F33.4で飛ばしたうえ4角で早くも後続を突き放した結果最後に差されるといういかにも丹内Jらしい騎乗でした。岩戸師も前走の敗因は前半の運び方にあると指摘し「普通に運べば勝機」と語っている以上、前走が「普通」ではなかったことを認めているようなものです。そこに「普通に乗ること」をモットーとする戸崎J起用となれば、めぼしい先行馬も居ないここはチャンス大でしょう。ブエナベントゥーラが居なければ1倍台もあったでしょうが、気性の関係で仕方なくこの距離を使う向こうとはスピードの絶対値が違います。頭に妙味。

2021年9月20日月曜日

【9/20(月・祝)】セントライト記念の全頭評価

[1]①ベルウッドエオ(吉田豊)

 前走の南相馬特別は福島としては珍しい前傾戦で、先行勢に不利な流れの中4角5番手以内での馬では最先着の⑥着と踏ん張りました。土曜の中山を勝ったナリノモンターニュと0.3差でもありますが、自己条件ならともかく流石に低く見積もっても2勝クラス相当のメンバーを相手にしなければいけないここでは家賃が高いです。

[2]②アサマノイタズラ(田辺)

 流石に師匠の手塚師を以てしても嶋田Jのポカをかばい切れなくなったのか、デビュー7戦目にしてようやく乗り替わり。前走のラジオNIKKEI賞はスタートから詰まらんとして外に持ち出すタイミングを窺っていたら後方に置かれてしまい、結局ノーチャンスの位置取りになったうえ4角から直線まで前が開かずちぐはぐな競馬に。減量期間中の若手ならともかく水仙賞以降このようなレースの繰り返しでは、継続騎乗させる言い訳を見つけることの方が難しいです。

 同馬の星野オーナーの活躍馬にはアユサン、ヤングマンパワー、ココロノトウダイなどがいますが、これらすべてが手塚厩舎の管理。同師への信頼も厚く、常にコンタクトを取っている所属の弟子にクラシックのチャンスをという意向も汲んで継続騎乗が許されてきた側面もあるでしょう。手塚師の「非情采配」といえば、ユーバーレーベンやつい先日のマイネルファンロンで奏功しているのは記憶に新しいところです。

 最終はDWで田辺Jがコンタクトし併せ馬。稍重のコンディションながら51.0-11.6と前週よりも大きく時計を詰めており、ここに来ての良化が窺えます。伸びしろで台頭する余地は十二分にあるかと。

[3]③ヴィクティファルス(池添)

 スプリングSまでの3戦は前半1000mが62秒ほどのゆったりした流れを中団から差し込むレース。G1で大敗した2戦は60秒ほどで流れる締まった流れで見せ場を作れませんでした。とはいえ、前走のダービーは13秒を刻む区間もあったりと緩急をつけることが出来た流れで、好位をロスなく進み直線もキレイに前が開いた割に案外だった内容からは距離適性の限界を感じるゆえ、仮に前半が緩んでも2200mではお釣りを残せるか微妙なところです。

[3]④タイムトゥヘヴン(柴田善)

 京成杯の案外なレースぶりやNHKマイルCでの健闘を踏まえれば、この馬の適性距離は2000m未満と見てよさそうです。距離短縮局面で買いたい馬につきこの条件では…

[4]⑤ノースブリッジ(岩田康)

 前走のラジオNIKKEI賞では向正面で掛った分最後止まっても③着でしたが、初めての2000m未満の距離でも自分の形に持ち込めたことは収穫でした。但しその前走はイン前が圧倒的有利になった馬場バイアスもあっての好走で、同様の期待を続けて掛けられるかどうかは難しく…

[4]⑥レインフロムヘヴン(石橋脩)

 距離があった方がいいタイプで2000m以上では大崩れなく走れています。但し前走の青葉賞は外差し有利展開に乗じて着を上げたもので、4着以下が実質1勝クラスのメンバーの中で⑥着ではここで強調できるほどではないと見ます。

[5]⑦タイトルホルダー(横山武)

 距離を気にしてか必要以上に控えたダービーでも⑥着と踏ん張りましたが、やはり行き切ってこそのタイプ。皐月賞の内容を思えばここでは力量上位は明らかですが、先行勢の隊列が読めないここでは何かにやられる可能性も捨てきれずで。

[5]⑧レッドヴェロシティ(M.デムーロ)

 前走の自己条件戦は目標にされた分の敗戦で、勝ったアラタがケフェウスSまで4連勝を決めたとあっては酌量の余地もあるレースでした。但し3走前の水仙賞は超スロー+アサマノイタズラのポカに助けられての勝利で、2走前の青葉賞も外差し有利のコンディション込みでの③着では重賞級の評価はまだ早計かと。

[6]⑨カレンルシェルブル(横山和)

 古馬相手の1勝クラスは斤量面、メンバー的にも相対的に3歳勢が有利になって当然で、ここを勝っての昇級と裏付けに乏しい現状では。

[6]⑩オーソクレース(ルメール)

 骨折休養明け。前走のホープフルSは前を走るランドオブリバティが逸走し、労せずして4角で先頭に立てたもののそこからが案外。当時だけ走ったとしても重賞級かと言われると疑問符で、ましてや完調とまでは言えない現状では。

[7]⑪ルペルカーリア(福永)

 前がかりな気性と体質的な問題から連戦よりも間隔を空けて使った方が走れるタイプで、唯一勝ち切った未勝利戦は中17週での臨戦でした。半兄サートゥルナーリアも2か月未満の間隔では(0,0,0,3)だったように、シーザリオ牝系の特徴と言えるでしょう。

 前走の京都新聞杯は若さを見せ、普通なら惨敗もあり得る掛かり具合ながら0.1差の②着と健闘。中京2200mにして前半1000mの通過が59.9秒というのは明らかなハイペースで、今年同条件で前半が60秒を切ったレースはこれを含め3つ(他の2つは1/16長良川特別、1/31美濃S)ありましたが、そのいずれもで逃げた馬は4秒差以上の大敗を喫しています。いかにルペルカーリアが異次元のエンジンを持っているかが見て取れるラップでした。

 1週前にCWで併せ馬を消化。ビッシリ追われ負荷をかけた調整が出来ている点も好材料で、気性面の問題からプールとの併用で様子見モードだった前回から気性面の成長も感じられます。毎日杯0.5差④着の内容からも通用の素地は持っており、同型が複数いる点も折り合い面ではプラス。菊花賞兄弟制覇に向けここは力を見せてくれるでしょう。

[7]⑫ソーヴァリアント(戸崎)

 失格が無ければもっと早く上のクラスに上がれていた馬で、この夏の連勝は実績を思えば当然と言える内容でした。初の重賞挑戦だった弥生賞は4角通過順がそのまま着順になるようなスローペースを唯一差し込んで0.5差④着でしたが、体重を増やしながら連勝しているようにここに来ての成長は確かでしょう。ペースが流れてほしいタイプでこのメンバー構成なら自分の末脚は使えそうで、権利取りの圏内には押さえる必要があるでしょう。

[8]⑬グラティアス(松山)

 本来苦手である瞬発力勝負となったダービーで0.6差⑧着と健闘しましたが、伸びずバテずのレースぶりは皐月賞同様。先行勢が手薄ならば京成杯の再現もあると見ますが、このレベルの先行勢に割って入って自分のレースをやり切るとなるともう一回りの成長が欲しいところです。

[8]⑭ワールドリバイバル(津村)

 前走のラジオNIKKEI賞は結果的にインを取れた馬が台頭する流れで、緩くなった馬場で後方勢の末脚が削がれたのも味方しました。但し2着に上がれたのはノースブリッジが道中掛かって最後に止まった分であり、実質的には3着相当のパフォーマンスでした。逃げなくても競馬ができるところを示せたのはこの馬自身の成長ですが、斤量増+皐月賞の内容を考えればここでは強調し辛く。

<予想>
◎ルペルカーリア
○タイトルホルダー
▲ソーヴァリアント
△アサマノイタズラ

2021年9月19日日曜日

【9/19(日)予想】ローズSの全頭評価

[1]①イリマ(幸)

 この夏2連勝しましたが、負け残った未勝利戦とレベル的に疑問符の付く古馬混合の牝馬限定戦と強調材料には乏しいです。前走にしてもだいぶスムーズに運べて直線もロスなく外に出せた分の完勝で、勝ちっぷりが評価されて穴人気するようでしたら春の実績勢を重く取りたいです。

[1]②エンスージアズム(岩田望)

 フラワーC②着から参戦した春クラシック2戦は⑧⑱着。桜花賞は道中押っ付ける場面が目立ち、その前に取りこぼした2戦も含めマイルだとやや忙しいと見てよいでしょう。オークスはパドックでは問題なかったもののレースでは発汗が目立ち、向こう正面ではやや行きたがる場面も。おまけに直線の入り口では躓くような場面があり走りのバランスを崩し鞍上も無理をさせずに流してのもので、すべてが嚙み合わなかった敗戦と言ってよいでしょう。

 フラワーCこそ上手く外に出しての②着だったものの、馬群を気にする面があり精神的な課題を克服できなかった春シーズン。今回はそのフラワーカップ以来となる単走での最終追いで、併せ馬は1週前の時点で消化。3頭併せの真ん中に入れカレンルシェルブルには遅れたものの、キングオブコージに先着したのは及第点。直前を軽くしてテンションを程よく保つことに加えブリンカーを装着して挑む今回、変わり身があっても驚けません。

[2]③アイコンテーラー(亀田)

 早苗賞は特に強調できる勝ちタイムでもなく、その早苗賞で克服していたはずの稍重馬場のラジオNIKKEI賞は見せ場なし。メンバーや斤量差も考えれば当時の内容ではここは通用可能性薄くて…

[2]④スパークル(藤岡佑)

 追い切りは好時計で動ける体制にはあるものの1勝クラス、2勝クラスと小頭数戦を先行策で押し切る内容で特筆するレベルではなく、斤量面の恩恵もある古馬戦を勝ったというのみではここで即通用かとなると微妙な部分です。

[3]⑤クールキャット(ルメール)

 メジロ牝系の大型馬らしく立ち回りに不安を残し、2走前のフローラSでは外枠からごちゃつかずに立ち回れた利も大きかったです。今回は再度内枠を引いてしまった上初の遠征、調教の動きも悪くないとはいえ自動計時導入前後の比較で考えればオークス時にはだいぶ及ばない時計で、休み明けは静観すべきタイプと見ます。

[3]⑥メイショウオニユリ(池添)

 負け残りの未勝利戦→古馬混合牝馬限定1勝クラスを連勝しての参戦で、両方ともレベルには疑問符の付くレース。以前は古馬相手に好走すればそれなりの評価を与えられる水準でしたが、降級廃止で条件戦の古馬勢の層が薄くなり特に1勝クラスは以前よりも3歳馬の台頭が容易くなった事情もあり、古馬混合戦を勝ち上がるのは半ば当たり前という状況になった昨今ではよほどのパフォーマンスや相手でもないと、いきなり重賞、という評価は下しにくいです。

[4]⑦ストゥーティ(吉田隼)

 1勝クラスを勝ったばかりですがこちらは桜花賞でHペースを形成し0.8差⑦着と見せ場を作った実績があります。但し、2走前の負けを見るに溜め逃げは性に合ってなく、ある程度飛ばしてキレ勝負に持ち込ませない方が得策なタイプでしょう。形状的にどうしても前半に時計を要しやすい中京では、自分の形に持ち込むのはやや難しいと見ます。

[4]⑧オータムヒロイン(古川吉)

 2走前の1勝クラスはこの馬含め4頭が次走で即勝ち上がるレベルの高いメンバー。そこで唯一4角10番手以下から掲示板を確保した末脚はローカル向きと言えます。但し、スクリーンヒーロー産駒は得意コースと不得意コースの差が激しく、中京2000mは不得意コースに分類されます。


 上記はスクリーンヒーロー産駒における中京芝コースの距離別成績です。何故かこのコースだけ異常なまでに不得意としており、スタート位置が200m4角寄りに伸びる2200mだと何故か勝てているという不思議。これは中京だけの話ではなく…


 東京の数字がこちら。1800mに加えスクリーンヒーロー自身がG1を勝った2400mまでもこの有様な一方で、スタート後の直線が比較的短い1400mやコーナー3つというトリッキーな2000mではベタ買いでも儲かるレベル。根幹・非根幹というわけでもないですし、中山では満遍なく好成績を収めているあたりもまた謎で。とにかく、現時点では(クールキャット含め)スクリーンヒーロー産駒をこのコースで買うのは悪手という判断にならざるを得ません。

[5]⑨タガノパッション(岩田康)

 前走のオークスでは中2週での再輸送と酷なローテーションを克服して0.3差の④着と大健闘を見せました。但しご存知の通りの外差し有利コンディションに加えて、前の馬たちが脚が上がったところを差し込んできてのものですから、強かったというよりは展開をしっかり味方につけたという言い方の方が正しいかもしれません。ここは近2戦のような流れるレースは期待でき無さそうで、賞金自体は足りてもいるので自分の競馬に徹してどこまで、という一戦になるでしょうか。

[5]⑩エイシンヒテン(松若)

 白菊賞を勝ち賞金的には優位な立場で重賞戦線に参戦したものの、その後の好走は実質1勝クラスの忘れな草賞②着のみ。自己条件で逃げても残せない現状では。

[6]⑪プリュムドール(武豊)

 未勝利+古馬1勝クラスの連勝組ですが、4走前の未勝利戦ではプログノーシス(毎日杯③着)から0.2差の②着に健闘しています。先に動いた本馬を目標に、ゴール前で離れた外からプログノーシスが差し切ったというレースで負けるのは止むを得ず、逃げたマイネルジャッカルが1.2差⑤着となる中先行集団から踏ん張った内容は評価できるものでした。

 その次の未勝利戦でも青葉賞④着のテーオーロイヤルの②着。前走は斤量に助けられたとはいえ、0.7差⑤着のシルバーエースが次走で勝ち上がり。キレで劣る分前目につけられればしぶとく、前半が緩みやすい中京は合っているでしょう。内枠に先行タイプが揃った分位置が取れるかが鍵ですが、上り馬の中で一番の惑星ならこの馬かと。

[6]⑫アンドヴァラナウト(福永)

 前走の出雲崎特別は直線で行くところ行くところ前が塞がり、まともに追えたのは400m程度でアッサリ抜け出す強い内容でした。先行勢がほぼ壊滅という流れを終始3番手で進んでの勝利も価値は高いのですが、このレースを含め近4走は1000m通過が60秒を切っており比較的よどみのない流れを好走してきています。中京芝2000mとなると前半は緩むことが多いため、エアグルーヴ牝系がこのペースに耐えられるかという意味では試金石の一戦になるでしょう。

[7]⑬コーディアル(鮫島駿)

 前走は阪神JSの叩き台だったマーニのHペースで後方勢に流れが向いたのに加え、小倉の勝ち方を知っている鮫島駿Jが4角で内を回した好騎乗もありました。全馬が勝負をかけるトライアルとなると流石に話は別で、戦績は安定しているものの上手く乗って掲示板があれば、というところでしょうか。

[7]⑭アールドヴィーヴル(松山)

 この牝系はフランツ、アリストテレス、エスポワールと本来2000m以上で本領を発揮するタイプで、マイルでの3戦は適距離とは言えない中で健闘を見せました。急坂を1.5回上る中京芝2000mコースはこの馬向きの舞台で、あとは春に減らした馬体をどこまで戻せているかがポイントでしょう。

[7]⑮オパールムーン(横山典)

 ファンタジーSでポツン炸裂の②着を見せてからは尻すぼみ。母コパノマルコリーニからは2桁人気で2勝を挙げたクリノコマチや10歳まで現役を続け引退レースの鳴尾記念で④着と健闘したサイモンラムセスといった個性派が出ており、春までの結果だけで見限るのは早計という向きもあります。しかし父のヴィクトワールピサ自身は本来はマイル寄りの適性の持ち主で、小回りでスピードが必要な皐月賞や有馬記念は勝てても大箱で持続力を要するダービーやJCでは③着が精一杯でした。今回の距離延長は少なくともプラスではなく、愛知杯のようなハイラップでポツンが利くような展開にでもならないことには…

[8]⑯タガノディアーナ(和田竜)

 春の内容ではここで強調できるほどの実績とは言えないものの、前走の糸魚川特別で先行有利の流れを差し込んでランドオブリバティの②着した内容は評価できます。2走前の小倉戦でコーナー4つも克服済で位置取りも不問。相手には押さえておきたい1頭です。

[8]⑰オヌール(川田)

 デビューからの2戦はスローを前付けして押し切っての勝利で、前走はいきなり前半5F60.2のまっとうなペースになり位置を下げてしまいました。加えて初輸送を考慮して直前も手控えるなど調整も噛み合わず。今回は最終で川田JがコンタクトしCWで52.0-11.9と上々の動きをマークしており、枠が枠だけに位置取りが鍵ですがスローからの決め手勝負になれば出番はあるでしょう。

[8]⑱レアシャンパーニュ(浜中)

 斤量的に有利であるはずの古馬混合の1勝クラスを2度も取りこぼし。未勝利からの連勝でここに来ている馬も多いこのメンバーでは伍せるとは言い難く…

<予想>
◎エンスージアズム
○アールドヴィーヴル
▲オヌール
△アンドラナヴァウト
△タガノディアーナ
△タガノパッション
△プリュムドール

2021年9月18日土曜日

【9/18(土)予想】

■中山12R マイネルデステリョ

 未明から降り続く大雨の影響を考えると、よくて重、最悪不良馬場で最終レースを迎えることになりそうです。

 マイネルデステリョの父エイシンフラッシュは、国内25戦のうち実に23戦が良馬場でのレースで、その他は稍重が2回あるのみだったのですが皐月賞③着、春の天皇賞②着といずれも好走していました。元々、その父キングズベストの産駒はトーラスジェミニをはじめとし重馬場を得意とするタイプが多く出ますが、このエイシンフラッシュの産駒については明確に「良<稍重<重<不良」という傾向が出ています。


 上記は全期間の成績で、回収率はもとより勝率、連対率、複勝率のすべてで馬場が悪いほど良くなるという珍しいまでにキレイなデータ。能力の基礎値が高くどのようなコンディションでも満遍なく走るディープ系が叩き出す数値と違って、コンディションの良し悪しが買い要素に直結すると言ってよいでしょう。

 なお、マイネルデステリョ自身は稍重以下で(1,1,0,3)。そもそも生涯で1勝しかしていないので適性を語るほどの母数でない上、畠山師は「馬場は悪くならない方がいい」と語っています。但しこの馬は切れる脚が使えずに現級で足踏みしており良馬場歓迎、というほどのタイプではないはずで、前走の札幌戦も丹内Jがのんびり構えていたところ外から先行勢が殺到し包まれ動けなくなってしまったことで位置を下げての敗戦でしたから、やはり2走前のように前前で運んだ方が現状では良さを出せると見ています。

 加えて今回気になっているのが「なぜここに使ってきたのか」という点です。

 ラフィアンのWebサイト(会員でなくても閲覧可能)では前走で北海道4連戦を終えて帰厩し、一旦ビッグレッドF鉾田TCへ放牧に出したうえで10月以降の新潟or福島開催を目指す方針とされていました(9/10時点)。しかし結局鉾田には行かず在厩で調整され、何の予告も無く中1週での中山続戦。陣営は動きが良くなってきたことをアピールしていましたが、そもそも休養予定を覆してレースに使う判断に至った理由に一切触れられていないのが謎で…(ラフィアンではこれが普通なのでしょうか?)

 強いてこれまでと違う点を挙げるとすれば、戸崎Jがこの馬に初めて乗るというところでしょうか。戸崎Jは今年ラフィアン系列(ラフィアン、ビッグレッドF、ウイン名義)の馬に20鞍騎乗していますが(①着は無し)、その8割にあたる16鞍が故・岡田繁幸氏の逝去後にあたる5月以降に集中しています。いわゆる「お抱え騎手」の重用は岡田氏自身の指示ではないと言われているものの、グループ内に絶対的な影響力を持った同氏が不在となったことで柔軟性が出てきたことはやはり事実でしょう。

 ただ、仮に戸崎Jが確保できたことが出走の理由だとしても、これまでのラフィアンの騎手起用の方針からしてそのような物言いは当然できないはずです(フラワーCのユーバーレーベンは直前の騎乗停止という止む無き事情もあるでしょう)。在厩していたのも様子を見たうえで「プランB」の可能性を探っていたからと考えられ、理由なき続戦はひとえに適鞍でトップジョッキーを確保できるチャンスが出来た(丹内JはコスモビューFのロッソモラーレに騎乗)という解釈が妥当ではないかと考えます。メンバー的にも上位勢は力量差が無く、台頭の余地は十分でしょう。

2021年9月12日日曜日

【9/12(日)予想】京成杯AHの全頭評価とねらい目レース(中京2、セントウルS)

■中山11R

[1]①グレナディアガーズ(川田)

 前走のNHKマイルCでは先行勢の中で唯一踏ん張りました。道中は折り合いに苦労し、4角でもあえて外を回して控えさせましたが、結果的に内前の先行勢が全滅したことからもあのコース取りは正解でした。

 但し川田Jはレース後「秋は別路線になると思います」とコメントしており、距離適性の限界を示唆していました。タフな流れを残せるスピード能力はある一方で本質的にテン中終いを揃えられるタイプの馬ではないため、トロワゼトワルのように後ろをちぎる逃げを打てるタイプの馬でもいないとこの馬向きの展開にはなりにくい懸念もあります。

[1]②カテドラル(戸崎)

 外枠で壁を作れなかった安田記念から一変、前走の中京記念では後方でしっかり溜めを作るこの馬の好走パターンに持ち込めました。4角でメイケイダイハードに張られたロスもあり、スムーズなら頭までと思わせる内容でした。一瞬の脚を使える強みは中山向きで、この内枠でうまく捌けるかは鍵ですが馬群で溜めさせることにかけては戸崎Jの真骨頂。展開利は欲しいですが相手にはマーク必要と見ます。

[2]③ベステンダンク(武藤)

 流石に9歳となりキレに劣る分、重馬場などで時計がかかった際には台頭できますが開幕週の良馬場となると呑まれる可能性が高いと見ます。

[2]④グランデマーレ(藤岡康)

 前走の関屋記念は左回りのせいか道中終始スムーズさを欠いていましたが、位置をかなり下げた割には直線だけで5着まで押し上げてきました。やはり神戸新聞杯と鷹巣山特別の大敗は左回りと見てよく、右回りで番手外を取るいつものレースができれば当然にパフォーマンスは上げてこられますし、重賞タイトルに手が届く位置にいる馬であることは間違いないでしょう。但し今回は同じ藤岡でも弟の康太Jが初騎乗。関東での経験値が兄とは段違いな上乗り難しさも残すこの馬でテン乗りとなると一抹の不安は残ります。

[3]⑤ステルヴィオ(横山武)

 メンタル面と喉の不調が長引く現状。新味を狙ったダート参戦も不発に終わり、7か月半ぶりの実戦は久々のマイル戦。この距離はおととし6月の安田記念以来となりますが、当時は超豪華メンバーの中で0.4差⑧着と善戦しており、やはりこの馬の最高のパフォーマンスは1600m~1800mだと見ています。

 この中間は追うごとに時計を詰め、毎週の併せ馬で気持ちを乗せることにも努めたと陣営。中身がどうかは走ってからにはなるものの、右回りのこの距離は復活にはうってつけの舞台。これで走れば本当に「岩戸最強」と言っても良いのでしょうが…果たして。

[3]⑥レイエンダ(津村)

 前走のダービー卿CTではスタートで躓いた際に走りのバランスが崩れ、鞍上も無理をさせずに流しただけのレースになりました。気持ちの面で難しいことろがあったことからもこの中間に去勢を施し、今回は5か月ぶり+調教再審査を経ての1戦となりますがもとよりスピード比べは得意ではなく、開幕週の馬場でパフォーマンスを上げられる期待は薄いです。

[4]⑦マルターズディオサ(田辺)

 前走のヴィクトリアマイルでは終始馬群の中で窮屈な運びになってしまい、スパッと切れるタイプではないため位置を上げられませんでした。加えて連戦よりも休み明けのほうが走れる気性で、今回楽に立ち回れる外目の枠が取れればねらい目はあるかと思いましたがこの枠と斤量では少々微妙で、外から行きたい馬もある程度いる今回のメンバー構成で上手く好位外を取れるかがポイントでしょう。

[4]⑧ワイドファラオ(柴田善)

 芝は2年ぶり。元々ニュージーランドTの勝ち馬であり適性を疑う余地はありませんが、前走は久々にこの馬の良さを出せそうかと思った小倉の高速馬場で0.9差⑧着。結局のところ中央のダート重賞ではユニコーンSを勝ったのを最後に馬券になっていません。かしわ記念はいろいろな事情があり恵まれた一戦で、4歳以降のパフォーマンスを見るとここで取捨を検討するレベルにはないというのが見方です。

[5]⑨コントラチェック(大野)

 恐らくは本来なら丸山Jが乗る予定だったのが急遽の乗り替わり。乗り難しい部分があるだけにテン乗りはプラスではなく、前向きな気性故距離短縮で結果を残しているだけに久々の距離延長となるローテも微妙です。

[5]⑩カラテ(菅原明)

 爪不安明けの安田記念は参考外。前走の関屋記念は最終の坂路で51.9-12.7と、50秒台をマークした東京新聞杯ほどではないものの調教でも動けており②着好走と復調を見せました。但し今回は強めに追って53.3-12.9と強調できる時計ではなく、この馬のパフォーマンスを発揮できるかは微妙なところです。

[6]⑪バスラットレオン(藤岡佑)

 ニュージーランドTは実質2勝クラスのメンバーとはいえ、逃げて上り最速をマークする日の打ちようのないレース。馬券に絡めなかったのは「冬場」「不適距離」「落馬」と敗因がハッキリしており、54kgの斤量は相当恵まれたと言ってよいでしょう。陣営は仕上がり途上であることを強調していましたが、最終追いは坂路でミッキーブリランテを突き放し自己ベストの50.2をマークするなどさらなる成長を見せています。控えさせることを示唆しているのでそこで我慢が利けば、という条件付きにはなりますが、力量通り走れば圧勝まであっても。

[6]⑫カレンシュトラウス(池添)

 脚元の不安から攻めきれないジレンマがあり、以前は早い時計は直前に1本出すのが精一杯という状態だったのが、昨冬の休養を経て馬が変わってきました。この連勝中は1週前、最終と負荷をかけて仕上げられており、その中でも体重を増やして勝っているのは好材料。今回は1週前・直前と一杯に追われており状態に不安は無いと見ます。但しここ3戦は後傾戦を速い上りで勝っており、テンが速くなることが必至の今回、重賞のペースでどこまで対応できるかが課題。充実度で突破する可能性も十分にあり得ますが…

[7]⑬スマートリアン(三浦)

 ここ2戦はリステッド戦で連続②着。いずれも勝ち馬には上手く乗られたものでこの馬の力は出せていたと見ています。但し今回久々に三浦Jが騎乗する点はやや気がかり。キズナ産駒のこの馬のキレを引き出すとなると手が合わない可能性も考えられます。


 上記は「2016年以降の芝レースで三浦Jがヘイルトゥリーズン系の父を持つ産駒に乗った際の成績」です。複勝率の上位を占めるのはステイゴールドやSS直系など見事に「非ディープ」の馬ばかり。ディープインパクト産駒自体は能力の元値が高いのでそれなりの数字ですが、キズナ産駒は下から数えた方が早くディープブリランテ・ブラックタイド(ディープの全きょうだい)に至っては下からワンツー。

 元々今年の勝ち鞍も芝14勝(うちディープの仔or孫は3勝)に対しダートで32勝と、粘り強く追った時に味の出るジョッキー。芝のスピード比べに偏重した中央競馬のG1を勝てないのも仕方ないと思える部分もありますが…

[7]⑭マイスタイル(横山和)

 6歳シーズン以降は「休み明け好走→続戦で凡走」のパターンを繰り返しており、前走の関屋記念は休み明けローテも嵌っての0.2差④着好走でした。続戦ローテの今回は望み薄で。

[8]⑮アカノニジュウイチ(横山典)

 それまで3勝は後傾戦を速い上りで制していただけに、スプリントらしい前傾戦となった前走のテレビユー福島賞で勝ち切ったのは意外でした。元々東京芝1400mの新馬戦で1頭だけ違う脚を使って差し切ったように、マイル前後での活躍が期待されていた馬。本来もう少し前半はゆっくり入った方が良く、マイルへの参戦はプラスに働く期待があります。横山典Jの進言でここに使ったというのも不気味で、開幕週となるとどうしてもイメージは逃げ・先行有利ですが前がごった返すと差し追い込み勢の台頭もあり得るのが秋の中山。シャタリング効果でポツンからの大外一気でも届く可能性が。

[8]⑯スマイルカナ(柴田大)

 春2戦は休み明けにもかからわず昨秋より体重を減らしての臨戦で、本来のデキにありませんでした。中間はじっくり乗られ馬体も回復、復調気配をうかがわせる調整過程となっています。逃げ馬にとって中山芝1600mの大外枠はマイナスでしかないですが昨年も大外枠から②着しており、55kgが鍵もハナにこだわらなくていい今なら克服もできるかと。

<予想>
◎アカノニジュウイチ
○バスラットレオン
▲ステルヴィオ
△カレンシュトラウス
△カテドラル
△グランデマーレ
△マルターズディオサ
△スマイルカナ


■中京2R ベルマレット

 前走は結果的に距離が長く、目標にされた分キレ負けする格好に。距離短縮は好材料で、矢作厩舎の中2週×ルメールJで手ごろな人気なら狙う手はあるでしょう。


■中京11R クリノガウディー

 前走後は一息入れて立て直し、最終は坂路で53.5-11.6と態勢は整いました。鞍馬Sの前から岩田康Jがつきっきりで調教をつけ手の内に入れての2連勝。人気上位勢がスプリンターズSへの通過点としてここを使ってくる中この馬は重賞タイトルが欲しいところで、スピードタイプの先行馬も揃ったここなら折り合いの不安も無く運べそうです。ここを勝てば流石にオーバーなガッツポーズをしても許されるはずで。

2021年9月11日土曜日

【9/11(土)予想】紫苑Sの全頭評価

 [1]①スルーセブンシーズ(大野)

 2走前のミモザ賞は重馬場で前が飛ばす特殊展開。外差し優位のコンディションも相まって派手な勝利でしたが、その次のオークスでは先行勢総崩れの流れの中で後方待機から0.7差⑨着と物足りない内容。内が伸びなかったとはいえ、コースロスも無く直線ではポッカリ前が開いたにも関わらず伸びなかった点を考えれば、現状同じ3歳牝馬同士のレースでは劣勢と言わざるを得ません。

[1]②トウシンモンブラン(三浦)

 2走前に小倉の1勝クラス戦で②着した際の勝ち馬ジェラルディーナは2勝クラスを連勝。この馬も次走で直ぐに勝ち上がったように一定の評価ができるレースでした。但しその時も含めここ2戦は、小倉の乗り方を知っている松山Jが冷静に捌いてロスなく導いての好走。発馬は今一つにつき、フルゲートで外の先行勢にドッと来られると窮屈になる懸念があります。助走をつけて加速できる阪神や小倉のようなコースが向いているタイプで、急加速が求められる中山も特性を発揮しにくく。

[2]③ミスフィガロ(津村)

 2走前の未勝利勝ちはスローペースを自ら動き前を潰しに行ったもので、前走は一転1分58秒台の決着を中団から差し切る内容。ペースもコースも違う舞台で2連勝は素質開花を伺わせるものです。ウッドでの追い切りができていない点はもう1段階の成長を待ちたいところですが、1週前に速めの時計を出し直前に軽く、という調教パターン自体は連勝中のここ2戦と同じで好調を維持できている模様。但しこの枠では序盤に包まれる懸念があり、これまで福永、武豊、ルメール、川田とトップクラスの各騎手が跨ってこれだけの結果を残せている中津村Jがどこまでうまく捌けるか、でしょう。

[2]④エクランドール(ルメール)

 デビュー2連勝で4か月ぶりの一戦。前走の1勝クラス戦は8頭のうち4頭が未勝利馬というメンバー構成で、前半61.8秒のスローペースを2番手から押し切る楽な内容で正直ここで強調できるレベルにはありません。但し春に比べ楽に調教時計が出るようになっている点は成長を伺わせ、ポジションを取れさえすれば通用の目はあっても。

[3]⑤キヨラ(内田博)

 地元(盛岡/水沢)所属の牝馬がオパールCを勝ったのは2001年のセイントリーフ(セイクリムズンの姉)以来20年ぶりという快挙でした。ただセイントリーフは福島3歳S(2000年、旧馬齢表記)でも②着するほどの実績があったのに対し、キヨラの中央在籍時の新馬・未勝利の2戦はいずれも1秒以上の大敗。格上挑戦組が多いとはいえ、流石にこのメンバーで伍せるかと言われると…

[3]⑥シャーレイポピー(鮫島駿)

 初の1800m戦となった前走は前残りの流れを4番手から流れ込んでの④着と特に強調できる内容ではありませんでした。0.1差で③着だったハギノアレスと5kgの斤量差があったことを思えばそれと同じだけの脚しか遣えなかったのでは、距離延長はプラスではなかったと見るべきでしょう。さらなる距離延長に初のコーナー4つのコースと、克服すべきハードルは多くて。

[4]⑦パープルレディー(田辺)

 初戦の新潟内回り戦以降は全て東京の2000m以上戦を使われ、気性面・器用さで乗り難しさを残す現状。前走のオークスは調整過程も順調でなかったですが根本的にペースについていけてなかった印象で、よほど時計がかからないことにはこの距離では忙しいかと。

[4]⑧メイサウザンアワー(石橋脩)

 前走のカーネーションCは前半4Fが50.0秒のスローペースを2番手から押し切ったもので、どこから行っても33秒台の上りを使えた馬が上位に来るというレース。それよりは2走前のフローラSの0.2差④着の方が評価できる内容で、直線でスライリーに進路をカットされ切り替えるロスもあった中での接戦でした。外の先行勢との兼ね合いが鍵ですが、好位を取れれば粘り込みの目はあっても。

[5]⑨アイリッシュムーン(富田)

 2勝はいずれも1800m戦。2000mではポジションを取れても取れなくても末が甘くなる現状で、適距離からは外れているという見解です。

[5]⑩エイシンチラー(M.デムーロ)

 前走の三面川特別は前半4Fが49.5秒とかなりのスローで、本来なら後方待機勢にはノーチャンスのレースを差し切った強い内容でした。但し新潟の芝1800mはワンターンで実質的に1600mに近いレイアウト。リアルインパクト産駒が得意とする「左回りのマイル」とほぼほぼイコールのコースと見ることもできます。3走前のミモザ賞は特殊な馬場で飛ばした逃げ馬を追いかけすぎたもので仕方ないにしても、本来の適性を考えれば距離延長はプラスとは言い難く。

[6]⑪ファインルージュ(福永)

 一部ではルメールJが秋波を送っている?とも噂のこの馬ですが、本番に乗れない(サトノレイナスに騎乗予定)前提で乗り替わることは流石にありませんでした。

 状態面の不安を語っていたオークス時と違い今回は1か月前から十分に乗られ、日曜には坂路で53.2-11.9をマーク。最終もウッド3頭併せの真ん中で先着し素軽い動きを見せました。元々クイーンCを勝っているとはいえ桜花賞では促しながら追走するシーンがあるなどマイルはやや忙しく、状態面の不安もない今回は改めての期待をかけられそうです。

 加えて今回は岩戸厩舎への転厩初戦。調教停止となった木村師の管理馬が移って3週間ほどになりますが、元木村厩舎の所属馬の成績がこちら。


 転厩前後の戦績比較ができない新馬戦は除いているうえサンプルが少ないので何ともですが、この平均人気にしてこの複勝回収率は驚異的。オレンジフィズ以外は2か月以上の休み明けであり、オーナーサイドで上位騎手を引っ張ってこられるようになった結果とも言えますが、美浦で仕上げて新潟に輸送するケースでも安定して走れている点は図らずも「登録師」との格の違いと見てよいでしょう。ここも人気ですが素直に信頼できる1頭と見ます。

[6]⑫アビッグチア(嶋田)

 3勝クラスで走った経験があるのはこの馬だけで、水無月Sの0.3差⑤着はまずまずの内容。但しフラワーCでの自滅を見れば1400mから2000mへの一気の距離延長はプラスとは言い難く、アサマノイタズラでさえポカを繰り返した嶋田Jが鞍上では御せる期待は薄いと言わざるを得ず…

[7]⑬ハギノピリナ(藤懸)

 オークスはペースが緩い3角の内に進出を開始し、直線でも馬場の良い大外に出せたことが好走要因でした。2走前の矢車賞に続いて藤懸Jの好判断が光った内容でしたが、外差し優勢の馬場にも助けられた感は否めずで、デビュー以来阪神と東京でしか走ってこなかった点を考えても中山に求められる急加速という点ではやや物足りない現状です。2月のデビューから3か月で5戦を消化したのち、初の休み明けという点も不確定要素です。

[7]⑭ホウオウイクセル(丸田)

 小柄な馬体を活かした立ち回りの良さがセールスポイントで、コーナー4つのコースでは2戦2勝。いずれも1800mにつきルーラーシップ産駒のスイートスポットという見方もできますが、ワンターンで流れてしまう展開よりは息の入るこの舞台の方がパフォーマンスを上げられるでしょう。調子や展開のアヤがあったとはいえフラワーCではユーバーレーベン、クールキャットに先着しており、久々も先週そして今週とウッドで意欲的に併せ馬を消化。最終調整が坂路で単走だった桜花賞時とは歴然の出来と見え、再度の重賞好走が期待できるでしょう。

[7]⑮スライリー(石川)

 折り合いが難しい一方でスムーズに前目を取れればしぶとく、2走前のフローラS②着はもとより4走前の菜の花賞もアナザーリリックやストゥーティといった骨っぽいところを相手に勝利。やや急仕上げの感はありますが気の良いタイプで仕上がりは早く、嵌った時の走りはここでも通用するはずで押さえに。

[8]⑯クリーンスイープ(戸崎)

 前走は唯一の3歳牝馬でただ貰いの側面が強かったレースでした。2走前のカーネーションCを見れば、内をロスなく立ち回って直線もうまく前が開いたにもかかわらずいったんは交わしたメイサウザンアワーに差し返されるという物足りない内容。最後の100m位で急に内にモタれる仕草もあり、本質的にはやや距離が長かったかもしれません。追い切りの動きは悪くないものの、マイルで切れ味を活かしたいタイプと見ています。

[8]⑰ホウオウラスカーズ(横山和)

 ここ2戦は安定した取り口で2連勝。4角3番手以内であれば(3,1,0,0)で、スムーズに運べそうな外枠は好材料です。但し2走前は外枠から荒れた内をうまく避けての運びで、前走は最内からロスなく運んでの勝利。いずれも枠とコースコンディションが嵌った部分もあり、今回は開幕週の外枠+距離延長につき折り合って運べるかが鍵となります。直前が強めであったことでかえって馬に気が入り過ぎなければ良いのですが…

[8]⑱プレミアエンブレム(横山武)

 前走は上手く立ち回れた分の快勝でしたが2走前の1勝クラス戦がハイレベルで、この馬と当時の③④⑦⑨着がいずれも勝ち上がり済。コース経験もあり位置取りは問いませんが理想は前目で、この枠なら無理せずポジションを取れそうで、条件馬同士の比較でなら上位にランクできるでしょう。

<予想>
◎ファインルージュ
○ホウオウイクセル
▲プレミアエンブレム
△スライリー
△メイサウザンアワー

2021年9月5日日曜日

【9/5(日)予想】新潟記念の全頭評価とねらい目レース(新潟8、丹頂S)

■新潟11R

[1]①サトノアーサー(石川)

 前走の関屋記念は半年ぶりのレースで頓挫明けと強気になれない臨戦過程で0.7差の⑪着。ですが道中は手ごたえ十分にガッチリ折り合い、直線でも一向に前が開かずまともに追えなかった中で33.9の末脚で上がってきた点は密かに評価できるレースだったと考えます。中2週での再輸送がどうかですが、18年のエプソムC①着時もメイSから中2週で再輸送して勝っており苦にしないタイプ。菊花賞以降ワンターンのコースにこだわって使われており距離も問題なく、直線でばらけそうなここは脚の使いどころひとつでチャンスでしょう。

[1]②ザダル(石橋脩)

 ローテありきで間隔の詰まった菊花賞以外は崩れずに走れており、今回も2か月の休養ののち先月中旬に帰厩。その時点ではまだ手塚厩舎の管理下でしたが順調に登坂を重ね、大竹厩舎に戻った1週前には南DWで併せ51.6-11.5をマーク。但し、前走のエプソムC(①着)時は1週前の時点で同じ南DWでの併せ馬で50.6-11.8で走っており、自動計時が導入されて以後の時計の出方を考えれば一回りから二回りは物足りない数字です。直前は輸送を考慮しての軽めと割り切っても、斤量が57.5kgに増えることも加味すると前走以上とは?

[2]③ショウナンバルディ(戸崎)

 前走の小倉記念は外差しに振り切った2頭のワンツー決着。それを思えば0.9差⑤着とはいえ3着争いからは0.4差と悲観する内容ではありませんでした。但しこの馬は前半ゆったり入れた方が良いタイプにつき、ワンターンの新潟2000mでテンが流れるとなるとパフォーマンスを上げる期待は薄いです。

[2]④レッドサイオン(杉原)

 昨春にOP入りするまでは順調だったのですが、自分で止めてしまうような点が出てきてしまい昇級後わずか2戦で去勢。その後障害を3戦するも走るたびに着を落とし結局平地に戻しましたが、前走の札幌日経OP(函館)では4角で抜いた相手に直線で抜き返される始末でまだ戻っているとは言えない状況。去勢から1年になり、馬体が戻ってくればポテンシャルを取り戻せる期待はありますが元々それ以前もOPでの好走歴は無いだけに、検討は馬体回復を待ってからでも。

[3]⑤リアアメリア(川田)

 前走VM(⑬着)時の見解がこちら↓

 昨年のローズS勝ち、オークス4着と世代上位の実績の持ち主ではありますが2歳時に勝ったアルテミスS含め「途中で一呼吸置けるレース」ではしっかりギアを入れて走れる一方、ワンターンのマイルなど息が入らず流れるレースでは苦戦しています。前走の反省からある程度ポジションを取りに来るでしょうが、流石にアルテミスSのような緩い流れは期待できずで。

 結果的に終始11秒台以下のラップでは末脚を繰り出せず。あれでも近年のVMと比べれば緩んだ方ではありましたが…今回は距離が延びる点は良いものの、ワンターンの新潟2000m戦ではやはり息を入れにくい故、嵌り待ちという舞台にはなってしまいます。

[3]⑥パルティアーモ(横山武)

 新潟では(3,1,1,1)。理想は溜めてひと脚、で前走はスローを見越してか意識的に出していった分最後に捕まりましたが勝ちに行っての競馬で好内容でした。ただ相手関係としては必ずしも強調できるほどではない上、ここ2戦手綱を取ったルメールJが重賞も新馬戦も無い札幌での騎乗を優先したという点は気になり、この人気で買うべき馬ではない可能性もあると見ます。

[4]⑦マイネルサーパス(柴田大)

 パフォーマンスのピークはアンドロメダSを勝った3歳秋で、ハンデを背負わされるようになってからは今一つの内容。休み明けをひと叩きした今回、久々に56kgに戻る点は良いですが動きも今年の金杯(⑯着)とさほど変わらずで強調材料には乏しいです。

[4]⑧ギベオン(岩田望)

 切れる脚に欠ける分3走前のように舐められた逃げが打てれば良いのですが、流石にここは頭数も揃っており斤量も背負わされる分プラス評価はしにくいです。

[5]⑨アドマイヤポラリス(三浦)

 前走目黒記念(⑬着)時の評価がこちら↓

 純粋な切れ味勝負では分が悪いものの、道中でじわっと進出し直線で前を捉えるレースが得意なタイプでこの2連勝も自分の持ち味を発揮したレースでした。詰めの甘さも解消されつつあり、外回りコースだった2走前の阪神2400m戦で34.2で上りをまとめていることからもここにきての充実度は目を見張るものがあります。ただ今回はスロー必至のメンバー構成で、似たような位置から切れ味を繰り出せる同型馬も少なからずおりどこまで踏ん張れるかが鍵でしょう。

 このレースは4角でどこにいたかが大事で、後ろだと物理的に届かないので必然的に先行orまくり勢が着を上げたのですが、この馬に関しては6番手にいたにもかかわらず急加速が苦手なため4角で呑まれてしまい、直線では前も開かずに終わってしまいました。結果的に、離れた3番手集団を進んだことで自らヨーイドンの流れに入ってしまったことが敗因でしょう。多少時計がかかってくれそうなのは幸いですが、本来はもう少し距離があった方が良いタイプでワンターンの2000mでパフォーマンスを上げてくるイメージは湧きにくいです。

[5]⑩ラーゴム(池添)

 元来の気性難で、きさらぎ賞までは相手のレベルにも助けられ何とかなっていましたが流石にクラシックではごまかし切れませんでした。「いくらかマシになった」と陣営は語っているものの、現状併せ馬ができておらずこの中間は単走5Fで時計を出すのが精一杯。動きは良いですしワンターンの2000mで流れる分にはいいですが、G1のペースでも掛かってしまうようではこの距離では信頼は置きにくいかと。

[6]⑪ラインベック(津村)

 母系譲りの気の良さで逃げるとしぶとく、理想は前走や5走前のようにひきつけた逃げが打てる展開です。一方で多頭数のレースを苦手にしており、9頭立て以下では(3,0,2,0)なのに対し10頭立て以上だと(1,0,0,6)(←①着時は11頭立て)と成績の差が顕著に出ます。ひきつければ切れ味のある馬にかっさらわれ、かといって飛ばすと持たない、というタイプにつき今回は流れが向かない懸念が大きいです。

[6]⑫ヤシャマル(菅原明)

 前走初の重賞挑戦となったエプソムCは一気の相手強化の上定量戦。加えて差し決着を3番手で進む厳しい展開を0.7差⑨着ですから健闘の部類でしょう。今回は控える競馬を示唆していますが、前目につけたい馬は何頭か他にもいるうえ時計がかかりそうなコンディションは好都合。この中間も十分に乗られ、併走相手のザスリーサーティ(土曜新潟12Rで②着)が一杯に追うところを馬なりで併入と仕上がりも良好。斤量減も後押しに押さえは必要と見ます。

[7]⑬クラヴェル(横山典)

 ひと押しに欠ける一方自在性が強みで、横山典Jはまさに手が合っていると言えるでしょう。ただ今回は開催最終週につき内を突くオプションは難しく、ポツンからの大外一気も馬群がばらけると不発の懸念があります。理想は先行して33秒台の脚を繰り出せればよいのですが、出すと甘くなるタイプにつき勝ち切れるかと言われると…

[7]⑭エフェクトオン(木幡巧)

 新潟での2勝はいずれも内回り2400mでのもの。前走の阿武隈Sは空いた内を巧くついた田辺Jの好騎乗が大きく、本来は一瞬の脚で決めきるレースが理想です。

 この馬の全4勝のうち3勝が田辺Jなのですが、今回同騎手は新潟記念に騎乗なし。元々53kgはギリギリの斤量で、2016年以降の5年間で僅か6回しか騎乗がありません。


 基本的にG1ないしは勝負が見込める上位人気馬でないと乗っておらず(ゴールドギアは謎ですが同年の目黒記念で三浦Jに乗り替わって⑤着した経緯もあったかと)、今回に関しては見込み薄と判断したと推察されます。かと言ってこの成績を見る限りでは乗ってきたところで有力、とまでも言い切れないのですが…。

[8]⑮プレシャスブルー(柴田善)

 馬体を増やせるかが鍵になる馬で、理想は450kg近くまで持ってこれればよいのですがこの中間夏負けしたとの言及があり、ここ数日で涼しくはなったもののどこまで増やせるかは少々疑問符です。前走(442kg)からいくらかでも増えていれば紐にはあっても。

[8]⑯マイネルファンロン(M.デムーロ)

 前走の函館記念はまともに掛かってしまったうえ、レッドジェニアルに絡まれレースになりませんでした。この中間は美浦に戻り、最終は重めの南DWで単走馬なりで51.8-12.7をマークしており体調も上々です。力量的にどこまで、というのはあるのですが、手塚師がデムーロJを手配するのは「手替わりさえすれば勝ってくれそう」という見込みがあるサインです(ユーバーレーベンはまさにその例)。手塚厩舎の馬の騎手別成績を調べたところ

 M.デムーロ(5-3-6-12)勝率19.2% 複勝率53.8% 単回112/複回113
 ルメール(33-15-17-49)勝率28.9% 複勝率57.0% 単回77/複回82
 ※何れも短期免許での騎乗(~2014年)を含む。

となっており、信頼度が高いばかりか馬券的には寧ろおいしいというレベルになっています。社台系の有力馬も多く抱える厩舎につき絶対的な騎乗数は多くないですが、逆に言うとデムーロJが手塚厩舎の馬に乗るときは陣営の推薦に基づく起用と見てよいでしょう(実際オークス以降ラフィアン系列の騎乗依頼が急増しましたがすべて他厩舎で、手塚厩舎のラフィアン馬に乗るのはオークス以来)。

 事実、この馬にあれだけ乗っている柴田大Jが(1,2,3,6)で丹内Jが(1,2,0,6)なのに対し、たった2回しか乗っていないモレイラJが(2,0,0,0)というのがこの馬の現状を雄弁に物語っています。時計がかかればより良いですが、この乗り替わりだけでも十分に買う価値はあると見ています。

[8]⑰トーセンスーリヤ(横山和)

 前走の函館記念は前の2頭(レッドジェニアル・マイネルファンロン)が勝手に飛ばして労せずに折り合えた上、勝手に潰れたおかげでギリギリまで追い出しを我慢できた分最後は突き放す余裕を見せての勝利。おそらくこの馬自身は59秒くらいの前半通過だったとみられますが、馬場とクラスを考えれば速いというほどではなく丁度7走前に勝った新潟大賞典に近い展開に持ち込めたのも大きかったです。

 ただ今回もラインベック・ショウナンバルディあたりを行かせて見ながらの追走が期待できるうえ、宝塚記念の内容を見れば斤量に泣くことも無さそう。渋った馬場は割引も出来は良く再度の好走も可能と見ます。

<予想>
◎マイネルファンロン
○サトノアーサー
▲トーセンスーリヤ
△ザダル
△ヤシャマル
△クラヴェル
△リアアメリア


■新潟8R アイスナイン

 初勝利となった昨年1月の未勝利戦は雪の舞うコンディションの中2.0差の圧勝。現級でも④⑤着の経験はあり能力はある一方で、ここ2戦は途中で気持ちが切れたかのように失速してしまいレースになっていませんでした。

 4月の新潟戦後に去勢を敢行。今回は5か月ぶりのレースとなりますが、8月頭に帰厩しプールも併用しながら丹念に乗られてきました。最終追いは昨日の古町Sにも出走した格上のアーバンイェーガーに食らいつき併入。ラスト2F目のラップが11.9となっており、坂路の区間ラップが12秒を切るのはこの馬史上初めて。動き自体は現級入着していた年始の頃に戻っていると見えます。あとは馬体を減らさずに来れるかが鍵ですが、中間も調整を手控えてない点からもクリアできそうです。

 シュルードアイズを除く上位人気勢は前半4Fが50秒台に乗るようなスローで先行したりダート未経験の未勝利馬と不確定要素が多く、馬場と隊列を読んだ手綱さばきが光る大庭Jの起用も力量差の小さい条件戦ではプラス。狙うならここでしょう。


■札幌11R アイスバブル

 前走の札幌記念(⑦着)で本命抜擢しましたが、インを進むも3角でステイフーリッシュが脱落してしまいそのあおりを受けて最後方まで下げるロスがありました。伸びなおしての脚は見どころありで、やはり洋芝は合う模様です。続戦で丹頂Sに出てくれれば買いたいと思っていただけにまさに(個人的な)念願かなっての参戦。今年芝で(0-1-0-27)の水口Jが乗るにしても人気は必至でしょうが、好戦は可能な舞台です。

2021年9月4日土曜日

【9/4(土)予想】

■札幌9R タイセイグラシア

 ダートは2回目ですが、最初に走った6走前の未勝利戦は不良馬場の前傾戦+外差し勢のワンツーの展開を2番手で進んで③着。②着だったサトノテンペストは次走勝ち上がり、そして勝ったリプレーザは兵庫CS勝ち、JDDも0.1差の⑤着と実績を挙げており、一定のレベルにはあったレースでした。芝短距離でも先行できるスピードはありながら、切れる脚を使えずに善戦止まりが続いているだけにダート替わりはプラスで、被されずに運べそうな枠も好材料。


■新潟10R シーリアスラブ

 新潟は雨が残っており芝は稍重スタート。終日曇りで夕方以降雨予報もあるコンディションでは回復は望め無さそうです。2000mで2分台に乗るような時計のかかる馬場が理想のこの馬にとっては丁度いい具合と言えます。今春の転厩後、左回りでは③④④④着と安定して走れているうえこれまで連戦時は中間馬なりオンリーだったのが今回はしっかり負荷をかけられており、厩舎側も手ごたえをつかんだのかはたまた馬が変わってきたのか、とにかく今は調子が良いと見えます。4走前はロータスランドから0.3差に好戦しており現級突破の資格は十分。最終週の馬場に手を焼くことが無ければ一発の期待も。