[1]①マリアエレーナ(松山)
距離を伸ばしてから成績が安定していますが、立ち回りの巧いタイプで前走の小倉記念にしても上手く内を掬えた分の圧勝でありました。左回り自体は問題ないものの、内が伸びにくいコンディションなうえ小柄な馬体で56kgを背負うとなると超えるべきハードルは低くありません。
[2]②カラテ(菅原明)
前走の新潟記念はそれまでほとんど良績の無かった2000m戦での快勝。爪が伸びやすく暖かい時期は調整が難しい馬で、最終追いの栗東坂路53秒というのは以前美浦の坂路を51秒で駆け上がっていた馬とすれば物足りなくも映ったのですが、逆にそういう変化があったからこそ中距離への転向を判断したのかもしれません。
今回も前回同様坂路で53秒台と上々の動き。夏負け気味の調整過程であった前回に比べ、気温が下がった今の方が調子が上向きで、前回時3Fと2Fが逆時計だったのが今回は加速ラップを踏めています。元々マイルの実績馬故、コーナー3回のスピード勝負は歓迎のクチ。58kgも経験済で一発の魅力は十分です。
[2]③パンサラッサ(吉田豊)
最初の一歩目が遅いのは元からですが、前走でも指摘している通りドバイターフの頃からやや出が悪くなっており、ハナを取るのに一苦労しているのが気になります。陣営も「自分のレースをするだけ」とコメントしている通り逃げは揺るぎませんが、叩き2戦目のバビットが外におりスンナリとは行かない可能性も。ただでさえ出脚が悪いのでこの枠では被される懸念が大きいです。
[3]④ポタジェ(吉田隼)
大阪杯を見ていても解る通り、元々瞬発力勝負では分が悪く前目からスピードを生かすレースで勝ってきました。ポリトラックで仕上げられた前走毎日王冠の時に比べれば、坂路で追われた今回は一応の上昇が見込めますが、相変わらず陣営は控えるレースを示唆しており、まっとうな末脚比べではキレ負けするでしょう。
[3]⑤ダノンベルーガ(川田)
皐月賞は内枠が仇となり、ダービーは距離で止まってしまったというのが内外の共通見解。故に今回はベスト距離・ベスト舞台であることは間違いないのですが、気になるのは夏休みを含む中間の調整過程です。
最終追いはダービーも今回も軽めですが、元々右トモに疲れがたまりやすいタイプでそれに配慮していると堀師が詳細を語ってくれています。加えてダービー後、左の飛節球炎を発症しその治療に充てた分、もう少し休養期間が欲しかったというコメント。これを額面通りに捉えれば「天皇賞に出るのは既定路線だけど本当は間に合っていない」とも取れるわけです。名トレーナーをしてもこの馬を仕上げるのは難しいようで、現に中間も川田Jが来ることはなくコメントも無し。その最終追いは格下相手に後れを取る内容で、陣営は「先週びっしりやったので微調整で」と語っていますが、未勝利馬(しかも3歳)を交わすだけの負荷すらかけたくないというのは流石にどうなのかと。
[4]⑥ジオグリフ(福永)
秋初戦。完成度の高い馬で、皐月賞は外枠からスムーズなレースができた分の①着でした。ダービーは多頭数でごちゃついた分もありスムーズに運べずの⑦着で力負けではないものの、多少のロスをカバーできるという意味では2000mの方がやり易いという判断でしょう。但し毎々触れているように、ノド鳴りを抱えており常にそのリスクと戦わなければいけません。特に今週の東京はほとんど雨が降っておらず空気も冷えてカラッカラ。能力は認めても軸にはできないタイプです。
[4]⑦イクイノックス(ルメール)
ダービーは戦前からも懸念されていた通り距離に阻まれた印象で、勝ったドウデュース、③着のアスクビクターモアがスピードの持続力に長けたタイプでもありそちらに軍配が上がったレースになりました。長い直線でエンジンをふかすのが得意なタイプで、ダービーの結果を考えれば先を意識することなくここに全力投球してくるのは当然の流れでしょう。速めのラップを刻まれるとどうかという懸念はありますが、Bコースに替わったものの外差しのトレンドは相変わらずで、自分のレースができればここは好勝負可能でしょう。
[5]⑧シャフリヤール(C.デムーロ)
前走のプリンスオブウェールズSは最後伸びを欠きよもやの④着。元々不良馬場の神戸新聞杯でも④着と取りこぼしており、欧州の馬場は向かなかったのかもしれません。ダービー、ドバイシーマクラシックを勝ってはいますが、昨年のジャパンカップの内容などを見てもやはり理想は2000m前後のスピード勝負。適性舞台に戻ってきたここは無視できない存在です。
但し、気になるのがデビュー時からあまり馬体の成長がみられていない点。陣営も精神面の成長は認めますが、450kgでデビューした馬が今回の調教後馬体重でも462kg。恐らく輸送を経て450kg台前半くらいに収まってくるでしょうが、藤原英師も「能力の限界がわからない」と語る通りまだ伸びしろがあるのか既に完成しきっているのかはジャッジが難しい状況。国内戦では初めて58kgを背負うわけですからその点もクリアする必要があります。
[5]⑨ジャックドール(藤岡佑)
前走の札幌記念は控えて結果を残せたこと自体は大きいですが、パンサラッサが垂れてきた分もあったうえ上りが37.7も掛かった展開で差しのききにくい芝コンディションになったことも幸いしました。本来本領を発揮できるのは左回りの2000m。秋への始動戦と考えれば十分な内容ではありました。
当時と違って今の東京は外差しもバンバン効くコンディションですが、この馬自身も33秒台の上がりを使って逃げきっている経験があり速い脚は持っています。あとは58kgへの対応と逃げが叶わなかったときにそのように自分の能力を発揮できるかがポイントです。追い切り同様にリラックスして走れれば。
[6]⑩ノースブリッジ(岩田康)
前走の毎日王冠は痛恨の出遅れも最後にひと脚を使い0.4差の⑤着。以前は行けないとからっきしだった馬でしたから、地力の強化を感じさせる一戦でした。中間はウッドで3頭合わせを敢行。岩田康Jが駆けつけ、大きく追走し直線で仕掛けられるとすぐに前を捉える抜群の動きを見せました。速い脚を持っていないので上がり勝負になると厳しいですが、飛ばした先行勢を見ながら運べれば浮上の目も。
[6]⑪レッドガラン(横山和)
今年に入って重賞2勝と充実期を迎えていますが、元々は折り合いの関係からマイルを使われていたもののここに来て精神面の不安がなく走れているのも大きいです。但しその2勝はいずれもレースの上がりが35秒台で、流石に7歳でもあり速い上りを求められるこの舞台はパフォーマンスを落とす懸念が。
[7]⑫バビット(横山典)
前走のオールカマーでは1年7か月のブランクをはねのけ④着。キングオブドラゴンが張り合わず楽にハナを取れ理想的な展開を刻みましたが、最後はキレのある差し勢に交わされてしまいました。今度は前回以上に差し勢の台頭が見込める東京替わりで同型もおり、元々気のいいタイプにつき続戦によるメンタルの高ぶりも心配です。
[7]⑬アブレイズ(マーカンド)
前走の府中牝馬Sでは見せ場十分の⑤着。元々上りのかかる展開でないと厳しいと見ていましたが、前目を進み最後も34.3でまとめてきました。休み明けは走らない馬にしてはこれは上出来と言っていい内容で、叩かれての中1週で上積みも期待できます。元々2走前のヴィクトリアマイルでも控えて32.9の脚(メンバー最速)を使い⑦着まで押し上げていますから、5歳を迎えここに来て馬が一皮むけてきた印象すらあります。
何より期待は、今週来日して既に2勝を挙げているイギリスリーディング3位のT・マーカンドJです。
昨日は5鞍に騎乗し③⑤④①④着とオール掲示板。今日も東京2Rで既に勝ち星を挙げており、これを含め5鞍に騎乗します。乗鞍の数自体は本国リーディングでも2位につける妻のH・ドイルJの方が多いのですが、昨日のレースを見て感じたのは「安易に進路を求めず、直線では併せ馬にこだわり1つでも着を拾う」騎乗スタイル。溜めさせることを意識しつつ、かといって下げるのではなく好位で壁を作り直線でしっかり追うというのは我慢も必要ですし詰まりのリスクと表裏一体でもあります。
ただ、海外、特に欧州の競馬は小頭数のレースも多く、馬群が密集しやすいことがこのような騎乗スタイルが求められる一因でもあります。その点日本の馬は切れ味を持つタイプが多く、多少の距離ロスがあっても外に持ち出して脚を伸ばせば勝てることからあまりリスクのある騎乗をする人はいません。この秋は残念ながら騎乗停止になりましたが、スミヨンJが日本で勝ちまくれるのもこういった違いが生んでいるとも言えます。
今回アブレイズに求められるのはまさに「好位で溜めを作り直線でひと脚」という競馬。マイルでも善戦し速い上りに対応できている今なら一発の魅力は十分で、マーカンドJがその良さを引き出せばヘヴンリーロマンスの再現があってもいいでしょう。
[8]⑭ユーバーレーベン(M.デムーロ)
フローラSでさえも取りこぼしたように、2000mは正直距離不足の感が否めません。とはいえ香港ヴァーズが本線であるが故、逆算して酷な斤量を背負わずに使えるのはここぐらいしかないのが正直なところ。外目を無難に回ってくるだけのレースになりそうです。
[8]⑮カデナ(三浦)
今年は得意の小倉でも③⑥⑦着と尻すぼみ。過去4回の天皇賞挑戦と比べればメンバーはまだ与しやすいとはいえ、大外枠を引いてしまったこともあり立ち回りも難しく。
<予想>
◎アブレイズ
○イクイノックス
▲カラテ
△シャフリヤール
△ジャックドール
△ジオグリフ
△ノースブリッジ
■新潟12R アムールマルルー
速い上りが使えず、上りのかかる展開で浮上するタイプ。前走の中山戦は雨の降りしきる中の重馬場でしたがのそっとしたスタートで後方から。結果的に先行勢がそのまま残り出番のないレースになりましたが上りは35.0、2番手が35.7だったことを考えれば1頭だけ違う脚を使っていたと言えます。距離延長で追走が楽になることに加えて、雨の影響もあり新潟芝は上りがかかるようになっており、内枠から上手く立ち回れればチャンスあり。