[1]①アイアンバローズ(石橋脩)
2走前のステイヤーズSの時に紹介した通り、純粋なキレ勝負となると分が悪く道中からじわっと踏み出すようなレースの方が向いています。結果的に距離を伸ばしロングスパートが効くようになったことで、ステイヤーズS・阪神大賞典連続②着とパフォーマンスを上げてきています。前走は1週目の3角でハミをガツンと噛んだこともあり、鞍上が意図的に道中で突いたことで動き出しが早くなったのですが、こうなると本来前の馬には厳しい流れになるところこの馬は2番手から長く脚を使いディープボンド以外には抜かせませんでした。
この「後半5Fにわたって加速し続ける」能力は今回の天皇賞のキーになると考えており、タイトルホルダーが逃げるであろう展開を考えると「あのまま逃げさせてはまずい」と考えた各馬が早目に捕まえに行くことが想定され、動き出しが速くなる一方速い脚を維持できない馬は最後の坂で脱落してしまいます。道中自ら動き最後まで止まらなかった前走の内容は評価してよく、この舞台なら良さを活かせるでしょう。
[1]②ハーツイストワール(ルメール)
瞬時のギアチェンジに対応できる東京向きの馬。実際1勝~3勝クラスまでの勝ち上がりは全て東京2400mでのもので、最後の3Fの加速が求められるような舞台では好評価できますが流石にここは直線向いてからだけでは勝負にならずで。
[2]③ディバインフォース(田辺)
2走前のステイヤーズSはドスローを積極的に運んでの押し切りで、7走前に阪神2600mで勝ち上がっていますがこの時は前が潰れる超ハイペースを我関せずとばかりに最後方から運んでの追い込み。展開利を味方につけた勝ち方が目立ち、地力が求められる舞台では見劣ります。
[2]④ユーキャンスマイル(藤岡佑)
前走の阪神大賞典では久々に掲示板に載りましたが、その前は1年前の同レースでの②着でありもはやこの距離条件でしか脚が追い付かなくなりつつあります。その前走でさえ、中団から押し上げを図るもアイアンバローズを交わせなかったあたり年齢的な限界も見えつつあり、ペースが流れるであろう今回はパフォーマンスを上げる期待は持ちにくいです。
[3]⑤マカオンドール(松山)
2走前の万葉Sは格上挑戦で52kgのハンデに加えて3000m戦のわりに最初の3Fが60.3と流れたことも奏功し差し切りを決めましたが、前走の阪神大賞典では伸びきれずに④着。当時騎乗した吉田隼Jも「道中じっとしていたので最後伸びると思ったが」と語っており、本質的に距離を伸ばしてどうこうというタイプではなく。
[3]⑥メロディーレーン(岩田望)
スタミナは認めますが、現状では斤量、頭数、相手レベルと色々恵まれないと厳しいです。56kgでは3回走っていずれも2桁着順と苦戦もしている故。
[4]⑦テーオーロイヤル(菱田)
前走のダイヤモンドSは差し勢が台頭する中で3番手から押し切っての完勝。ただ元々昨年の青葉賞でも0.1差④着としているように、最後の3Fのキレが肝心の東京コースは向いていました。この4連勝を紐解くと4走前は差し有利の中京2200mで差し切り、3走前は前半1000mが64.1というスローペースを逃げ切り、3走前は前3頭がかなり飛ばした展開を離れた4番手で追いかけての勝利と展開を味方につけての勝利でありました。裏を返せばそれだけこの馬の自在性と菱田Jの判断能力が高いという証明でもあるのですが、阪神での3勝もいずれも外回りで本質的にはなし崩し的に脚を使わされる展開は向かないだけに。
[4]⑧クレッシェンドラヴ(内田博)
前走の日経賞は内前有利のコンディションを2番手で追いかけての②着。8歳シーズンを迎え目に見えてズブさを見せているだけに距離延長は歓迎ですが、速い脚が持続できるタイプではないだけに立ち回りを活かしてどこまで、という舞台になるでしょう。
[5]⑨ヒートオンビート(池添)
一瞬のキレは持っているのですが、脚の使いどころが限られるうえ抜け出すとソラを使われるという難しい馬。今回は最後の5Fにわたりなし崩し的に脚を使わされる展開が見込まれるだけに、長距離戦でもこの舞台は向かないと見ます。
[5]⑩トーセンカンビーナ(藤岡康)
前走の阪神大賞典は久々に良い条件で使えるかと思い◎にしたのですが、見せ場すら作れず1.0差の⑦着。展開を考えれば後ろ過ぎたことは確かなのですがそれでも勝負に持ち込めていたのが4歳時のこの馬でした。長くいい脚を使えるセールスポイントが薄れているのは否めず、2走前にダイヤモンドSで③着したのも一瞬の脚を活かせる展開になってのもの。キレ不足の現状では前目につけて一発を狙うやり方に賭ける程度なのでしょうが、それができる鞍上ではないだけに。
[6]⑪マイネルファンロン(松岡)
とかくこの馬は折り合って運べるかが大事で、前走のアメリカJCCも馬群から離しての追走が叶った分の②着でした。前半が61.2と決して差し勢に展開が向いたとは言い切れず、この馬のさらに後ろを走っていたキングオブコージに差されたのは仕方ないにしろ、ラスト5Fにわたって速い脚が必要な流れを3角から加速したレースぶりは評価してよいでしょう。
但しこの馬は実戦でのガス抜きが必要なタイプで、前走にしろ5走前に勝った新潟記念にしろ、その前のレースで行きたがってしまい大敗していました。陣営もその点気を遣い今回は中間単走オンリー、かつ松岡Jを乗せないというメンタルに配慮した調整が進められてきました。それでも1週前、当週とウッドで好時計をマークしており状態は問題なし。欲を言えばもっと外枠が欲しかったところですが、既にこの馬を手の内に入れた鞍上であればそう心配することはないでしょう。仮にもポタジェに先着した前走内容を考えれば、持てるポテンシャルは上位に匹敵するはずで。
[6]⑫ハヤヤッコ(武豊)
ダートのレースは最後の1Fないしは2Fで思いっきり上りがかかることが特徴で、追い込みが主体のこの馬もこうして前が止まる流れを得意としてきました。前走の日経賞は内有利展開で内を伸びての⑤着。芝でやれないことはないのでしょうが、このメンバーでこの枠に入ってしまうと立ち回りは難しく、シラユキヒメ一族も本質的には距離が伸びてよいわけではないでしょう。
[7]⑬ロバートソンキー(伊藤工)
昨年の神戸新聞杯(中京)で③着と、このメンバーで唯一ディープボンドに先着したことのある馬です。元々は東京マイルでの未勝利戦で1.33.5という好時計で勝っているようにキレとスピードを持っていますが、年齢を重ね長くいい脚を使えるようになり3走前・2走前と中京で連勝。特に2走前の長久手特別は前半5Fが62.5といかにも中京らしい先行有利ペースでしたが、これを後半5F~2Fまで11秒台を刻む中4番手の外から交わした内容は見た目以上に中身があったと言えるでしょう。ここまで大事に使われてきており中4週での臨戦はどうかという点はありますが、格上挑戦とは言え使える脚はこの舞台に向いており一概に軽視できない存在です。
[7]⑭ヴァルコス(三浦)
一昨年の青葉賞以来の不振から抜け出せていない現状。距離を伸ばして良くなったというよりかは相対的にメンバーレベルの低い長距離戦の方がまだマシというだけであって、追い切りも3歳時まではコース追いも併用されていましたが最近は坂路オンリー。負荷をかけきれない現状を抜け出すことが先決でしょう。
[7]⑮タガノディアマンテ(幸)
前走の京都記念はゲートを決め内前有利展開を味方につけての②着。アフリカンゴールドが逃げ切った中をそれについていっただけのレースにつき、本質的には評価できません。前を取れれば確かにチャンスはありますが、このメンバー、この枠では。
[8]⑯タイトルホルダー(横山和)
メンバー中唯一のG1馬で文字通りの「タイトルホルダー」。その3走前の菊花賞は生産に携わった岡田牧雄氏が「横山家の体内時計を信じた」と語ったとおり60秒-65秒-60秒という理想的なラップを刻み逃げ切り。中盤で完全に緩んだことで実質的には2000mくらいのレースをして勝ったともいえるでしょう。ただ当時は3歳馬同士のレースで距離不安から他の馬も捕まえるのが遅れた分楽に逃げ切れたという面もあり、ドゥラメンテ産駒は本質的には1800m前後が最もパフォーマンスを上げている点からも必ずしもステイヤーではないという点は注意が必要と見ています。
前走の日経賞は本番を見据えた仕上げとは言え、自分の形で逃げ切り。但し上位馬の顔ぶれからも明らかな内前有利馬場を63.5のペースで逃げさせてもらって、距離延長のボッケリーニに0.1差というのは物足りない内容です。このメンツに入れば明らかに力は上位ですが、一度逃げ切っている以上今回は中盤に楽もでき無さそうで、3コーナーまでにどれだけリードを保てるかがカギになってくるでしょう。
[8]⑰シルヴァーソニック(川田)
この馬もパンチ力不足からクラシックディスタンスより長距離重賞に出てきているクチで、一見成績は安定していますが前走の阪神大賞典は中団から運んでおきながら最後アイアンバローズを交わせずの③着。最後に地力で前を捉えられない以上、後半5Fの加速が必要なこの舞台では。
[8]⑱ディープボンド(和田竜)
この馬は長距離で真価を発揮するというよりは「それなりに強い馬の中で比較的距離適性が長め」という事情で3000m超を使われている節があります。事実、3歳時には京都新聞杯を勝ったうえ昨年の有馬記念で②着しているように中距離でも十分にやれる実力の持ち主です。結果的に、中距離G1で勝負になる馬がこの距離カテゴリに出てきたら距離さえ持てば無双できてしまうというのが実のところ。それだけ今の日本の生産界は長距離が軽視されていることの裏返しでもあります(無論、そうなったのは国内外の大レースの体系や未勝利番組の早期終了など、中距離以下スピードタイプを多く生産しなければならなくなった背景故ですが)。
それが証拠に、京都で行われた一昨年の菊花賞では最後に脚が上がっての④着。京都の3000mコースは中盤に緩み最後の3Fにギアを入れる走りが必要なためギアチェンジできるスタミナが必要で、本質的にステイヤーというわけではない点はタイトルホルダー同様に注意が必要です。そのうえで、各馬が早目にタイトルホルダーを捕まえに行くことで向こう正面からペースは必然的に速くなるはずで、速いラップを持続できるかという点においてはこの馬の持ち味が生きるレースになりそうです。
<予想>
◎マイネルファンロン
○ディープボンド
▲アイアンバローズ
△タイトルホルダー
△テーオーロイヤル
△ロバートソンキー
■阪神3R メイショウヒシャ
⑨着に敗れた前走の未勝利戦は、当時の②~⑦着馬が既に勝ち上がっているハイレベルな一戦。この馬と0.1差の前後にいた⑧⑩着馬も次走で②③着としており、自身も中1週続きで4走目だったこともあり3角から手ごたえを失くす厳しい競馬でした。立て直された今回は息の持ちも変わるはずで一発期待です。
■東京10R/ブリリアントS ホウオウスクラム
絞れてくれば走れる馬ですが、2走前に半年ぶりを叩かれたときは+28kgと太目残りが顕著。元々勝ち星は4~9月に集中しており、暖かくなって動けるようになってからが狙い時です。この中間は夏を思わせるような暑さでもありシェイプアップも進むはずで、特に今週は福島が1週遅れた影響で吾妻小富士Sと同日開催になったことで出走希望馬が分散したこともあり、メンバーも手薄な印象。斤量が54kgに戻るのも好材料で、先物買いで狙いたい1頭です。