■中山11R/有馬記念
[1]①ダノンデサイル(横山典)
京成杯は坂上からのひと脚、ダービーはインベタからの突き抜けと、器用さと加速の早さで勝ってきました。前走の菊花賞は出入りの激しい展開となったうえインに閉じ込められ動くに動けず。⑥着に敗れはしたものの悲観する必要はないと考えます。本来中山2500m戦、かつ有馬記念は3コーナーからの加速が求められるためロンスパ適性が必要ですが、インを立ち回って直線でひと脚を遣うレースに持ち込めれば話は別。ペースを乱すような逃げ馬も見当たらず、自分のリズムを守れればここでも通用しておかしくないはずです。
[1]②ドウデュース(武豊) 出走取消
取り消したので予想ではないですが…
「秋古馬三冠」を制したのは20年前のゼンノロブロイが最後。一戦ごとの消耗度が大きい現代競馬ではこれら3つすべてを制すことはおろか、出走することすら難しいのが実情です。仮に無事に出てきていたとしても何かが起こる可能性は否定できないと思っていただけに、残念ではあるもののこの先のことを考えれば「跛行で済んでよかった」というのが個人的な本音です。
[2]③アーバンシック(ルメール)
器用さに欠けるものの、エンジンがかかってからは長くいい脚を遣えるタイプ。春まではゲートに課題がありましたが、秋になって極端なレースをしなくてよくなり能力全開。セントライト記念・菊花賞と動きたいところで動けているのが大きな勝因でしょう。ウィークポイントが解消されつつある現状で、ロングスパート能力が求められるこの舞台も合っているはずであとは相手関係のみ。
[2]④ブローザホーン(菅原明)
前走のジャパンカップ時は宝塚記念時程度には中間動けていましたし、苦手なキレ勝負でも自分の脚は遣えてはいました。ただ、この中間はまた動きが後退。併せ馬では後れを取り坂路でも加速しきれずという内容で、大雨でも降らない限りは厳しいでしょう。
[3]⑤ベラジオオペラ(横山和)
長くいい脚、というよりは前付けしてここぞのタイミングで末脚と勝負根性を活かすレースが向いています。この中間は天皇賞が終わったあとの金曜から乗り出しを開始し、約2か月じっくりと作られてきました。ノメって脚を遣えなかった皐月賞以外は0.4差以内で常に走れており、器用さもあるタイプで位置をしっかりとり切れればここも大崩れなく走れる期待は持てるでしょう。
[3]⑥ローシャムパーク(マーカンド)
折り合わせたい馬御用達のルメール・戸崎の両Jを以てしても一筋縄ではいかない馬。4走前の大阪杯では途中で折り合いを諦めたかのような向こう正面での進出から残しての②着でしたが、相手に恵まれた部分が大きくここで同じことができるとは思えません。加えてアグレッシブ騎乗を是とするマーカンドJへの手替わりとなると…
[4]⑦スターズオンアース(川田)
前走のJCはスローペースを見越して前付けしたものの残せずの⑦着。戦前指摘した追い不足が示す通り、まだ本調子にはなかったと見られます。そこからの上積みがあればとは思いましたが、この中間も大して負荷は増えてなく最終は単走。前走以上は望め無さそうな状況です。
[4]⑧レガレイラ(戸崎)
母譲りのゲートの悪さか、必ず一完歩目に出遅れるため戦法が極端にならざるを得ない現状。それでもホープフルSは直線だけでシンエンペラーなどを差し切りましたし、その後は前残り展開やボコボコの芝、明らかな叩きレースなど敗因がはっきりしています。前走のエリザベス女王杯ではウッドの本数が少ないことから状態を疑いましたが、実際のレースでもルメールJが調子の悪いときに取る馬群に突っ込ませる戦法に出て⑤着とそれを裏付ける結果になりました。今回は従来のルーティーンに戻って週中と週末にウッドを消化する調教を積めており、少なくとも状態面ではこの秋一番と言えるはず。このメンバーで中山で33秒台の脚を遣った経験があるのはアーバンシックとこの馬だけ。前半に急かされない流れになれば自分の脚は遣えるはずで、いかに「我慢の騎乗」が出来るかがカギとなるだけに唯一無二の代打と言えるでしょう。
[5]⑨ディープボンド(幸)
速い脚が使えないのは元からそうで、ロンスパの持久力勝負になればいつでもやれる力は持っています。ここも上りがかかれば十分出番になるかとは思いますが、そのためには好走した21年のパンサラッサのように前半ぶっ放す逃げ馬がいることが理想。流石にシャフリヤールが自滅気味の逃げを打つとは思えず、末脚が求められる流れになることが見込まれるだけに。
[5]⑩プログノーシス(三浦)
能力は認めますが気難しさが同居するタイプで、スムーズに運べるかがカギとなります。それを表すデータとして、川田Jが乗ると(7,1,1,2)なのに対しその他の騎手だと(0,3,1,1)と勝ち切れず。追い切りラップが示すように瞬時のギアチェンジができる馬で、ゆえにコーナー4つの芝2000mがベスト条件。距離・舞台への対応力もさることながら、金鯱賞を勝った時に「今年はG1を勝てる」とまで言い切った川田Jが乗らないというのは…
[6]⑪ジャスティンパレス(坂井)
秋2戦は何れもスローの上り勝負になり④⑤着。差は詰めているものの末脚の限界という負け方で、やはりこの馬が中距離戦で台頭するためには過酷なハイペースで消耗戦になるほかありません。もとより器用に立ち回るのは苦手で、一昨年のこのレースではインから先行して⑦着、昨年は出遅れて最後方から大外を回して④着と中山コースは(0,1,0,3)。コーナーからの加速が難しいタイプでここは難しい運びが要求されるだけに。
[6]⑫シュトルーヴェ(鮫島駿)
かつてエスポワールシチーの主戦だった佐藤哲三元騎手が語っていたエピソードとして、駐立が悪い同馬がゲートで後手を踏まないために「鼻先をゲート下部に押し付ける」ことをしていたのだそう。普通、ゲート内の馬は開いたときに瞬時に対応できるよう極力前を向かせるのがセオリーですが、この馬の場合はこうすることでゲートが開いた瞬間にぐっと前を向いて走りだせるんだそうで、後を受けて8歳シーズンに手綱を取り南部杯・JBCスプリントを勝った故・後藤浩輝元騎手にもこれを教えたとのことでした。
ゲートの悪い馬というのは少なくなく、実際に同馬も逃げ馬にもかかわらずデビュー時点からゲートの課題を指摘されていました。それでも、数々の大舞台で勝利に導いた名手たちは工夫し、時にはこのケースのように「その馬にしかない解」を導き出してきたわけです。大舞台の手綱を任される乗り役というのは、どんな時でもより良い状態でスタートを切らせられる存在だと思います。あれだけ沢山G1に乗っているルメール、川田、武豊といった面々がそうしたトラブルに見舞われることが少ないのは、ゲートが開く前からの行動も違うのだと思っています。ジャパンカップのシュトルーヴェ・阪神JFのクリノメイと、たまたま自分が◎を打った馬が2週連続でスタートで終戦してしまったのは偶然ではないでしょう(反省)。鮫島駿Jは昨日までで今年99勝と、キャリア初の年間100勝に王手をかけて中山に乗り込みます。進路判断と馬を動かす力は間違いなく成長しているだけに、こうした「ゲートが開く前」の作業がレベルアップするともっともっと活躍の機会は増えるはずです。
さて、前置きが長くなりましたがシュトルーヴェは前走のJCが案外という内容。出遅れもそうなのですが、直線で追い出されるもいつもの脚が使えず、ダノンベルーガに差し返されたのは不満です。今年の日経賞を勝っているとはいえ、35秒台の脚で間に合ったのはメンバーレベルによるところも大きかったです。ロングスパートよりギアチェンジというタイプなだけにスタートを決めて直線ひと脚、が出来ればよいのですが、出していくと末が無くなるというのが前走で露見しただけに、ここでは純粋に足りないという評価です。
[7]⑬スタニングローズ(ムーア)
前走のエリザベス女王杯は相当メンバーに恵まれての①着でした。牝馬同士の体力勝負なら十分に伍せるわけですが、さすがに牡馬が相手となると…
[7]⑭ダノンベルーガ(松山)
1800m前後の流れが向いているだけに、さすがに前走のジャパンカップは距離が長すぎました。そこから距離延長とはなるものの、トリッキーな中山2500mコースではスピードも必要なため少なくとも前走よりは前進できるかと思います。但し、小脚の遣えるタイプではないうえに国内で馬券になったのは一昨年の天皇賞(秋)が最後。前走に続いてムーアJにもクリスチャンJにも選ばれなかったというのがこの馬の立ち位置でしょう。
[8]⑮ハヤヤッコ(吉田豊)
道中の追走力に課題があり、かといってスタミナ比べで勝てるわけでもないため大箱でだらっと流れるレースが向いています。前走のアルゼンチン共和国杯は外差しバイアスに得意の左回りという要素もあって勝ち切りましたが、右回り替わり+3角からのペースアップに対応できるかは課題です。
[8]⑯シャフリヤール(C.デムーロ)
昨年は香港で現地入り後に除外となり、直接中山に入厩しての調整。万全とは言えない中でも0.3差⑤着と地力は見せました。とはいえ中間はまともに時計を出したのは先週のウッドのみ、最終は芝コースでの追い切りと本気度を疑う調整内容。これが藤原厩舎と言えばそれまでですし、クリスチャンJが乗ると①④⑤②⑤③②③着と掲示板を外していないだけに来ても不思議はないのでしょうが…
<予想>
◎レガレイラ
○アーバンシック
▲ダノンデサイル
△ベラジオオペラ
△シャフリヤール