[1]①[外]ゴリアット(スミヨン)
日本の馬が何度やっても凱旋門賞を勝てないのと同じように、現代の日本と欧州とでは芝コースの質が違いすぎて全く別物の競技になりつつあります。参戦にあたりオーナーサイドは「世界最高の芝レースは欧州にある」との考えから参戦したと語っていますが、もはやどちらが優れているかという話ではなく求められる強さが違うという話です(ゆえに自分は日本の馬が凱旋門賞に挑戦するのは無謀と考えています)。ゴリアットが2走前に勝ったキングジョージにしても芝2390mの走破タイムが2.27.4(良)となると府中の芝2400m戦では5秒は短縮しないといけない計算で、さすがにスピードが違いすぎます。
[2]②ブローザホーン(菅原明)
古馬になってからあまり併せ馬でよく見せなくはなってきましたが、前走の京都大賞典では1週前に先着した相手に週末の併せ馬で遅れるという調整過程でシンガリ負け。中間は在厩でみっちり調教を積まれ、直前こそ軽めも2週前の併せ馬は宝塚記念の時くらいには動けています。但し、仮に復調していたとしてもそもそもこの馬はキレが求められない北海道ローカルや重い馬場向きの特性の持ち主につき、この舞台で前進する要素は見当たらず。
[3]③ドウデュース(武豊)
前走の天皇賞では最後方から折り合い、まさに異次元の末脚で前を捉え差し切り。レースの上りが33.7であり決して前が止まったわけでもないのに、この馬自身の上りが32.5。溜めに溜めて、という戦法が嵌ったにせよこの馬の持つポテンシャルは疑いようがないことが再確認できました。能力だけなら間違いなく最上位ですが、やはりここは同じコースで距離が延びることに加え確たる逃げ馬が不在でペースが落ち着きそうなのが懸念点。気性的に連続好走できないタイプということも踏まえれば、ここでガス抜きして有馬記念で再度好走というイメージも描けるだけに過信はしにくい場面かと。
[3]④ジャスティンパレス(C.デムーロ)
勝ち鞍は長距離ですが体力があるので高速決着自体は問題なく、昨秋の天皇賞でも1.55.6の時計で走れたように他の馬が脱落するようなハイペースの中距離戦になれば台頭可能です。ただ今回はペースが落ち着きそうなだけに、まっとうに末脚を遣えるタイプでないこの馬にとっては展開が向かない懸念が。
[4]⑤シュトルーヴェ(鮫島駿)
キレを活かしたいタイプで前走の宝塚記念は参考外。2走前の目黒記念で繰り出した32.9の脚もさることながら、この馬の持ち味は高いギアチェンジ能力にあると見ています。当時、残り4F目のラップが12.3だったところから次の区間で一気に11.2-11.2-11.4と加速する究極の上り勝負に。本来目黒記念は坂を2回登るレイアウトにつきゴール前は止まりやすいレースなのですが、スローで流れたこともあり上りがかからず。それをほぼ最後方に近い位置から差し切ったのは、モレイラJの腕っぷしもさることながらこの馬の高い能力の証左と言えるでしょう。スローからのギアチェンジが必要になりそうな今回、これを活かすためには今回内枠が欲しかったところでここであれば許容範囲。進路が出来なければ終戦ですが、そこをこじ開けられる鞍上だけに警戒は必要でしょう。
[4]⑥ダノンベルーガ(松山)
昨年も香港を本線としながら選出されずやむなくJCに回っての⑥着。好走歴も1800~2000mに限られるうえ、調教から気難しさをのぞかせる現状で距離延長は歓迎とは言えません。おまけに堀厩舎の看板馬にも関わらずクリスチャンJもムーアJも騎乗してくれないとなると…
[5]⑦シンエンペラー(坂井)
時計が求められる上級戦になると善戦どまりという現状。前走の凱旋門賞は馬場が悪すぎたので度外視してよいのでしょうが、ホープフルS②着、ダービー③着はあくまで同世代の体力勝負。古馬相手に同じパフォーマンスを繰り出せるかは未知数ですし、消耗戦からの帰国緒戦となると手は出しにくく。
[5]⑧[外]オーギュストロダン(ムーア)
通用の物差しとして考えられるのは昨年のBCターフ①着。当時③着に降したシャフリヤールは既に国内の高速決着に対応できなくなっている馬とはいえ、比較的日本に近い芝馬場での実績があるのはやはり血は争えないといったところでしょうか。それでもまだ1~2秒は時計を詰める必要があるうえ、当時は経済コースを回り直線でうまく進路が空いた幸運にも恵まれました。外国馬の中では一番期待できる存在ではあるものの、勝ち切るまでのインパクトは見いだせず。
[6]⑨チェルヴィニア(ルメール)
前走の秋華賞は苦手と見られていた右回り×小回りを克服して勝ち切りました。癖が強くて乗り難しい馬ゆえに乗り替わった桜花賞こそ取りこぼしましたが、それ以外はパーフェクト。この馬もやはりオークスの走りにギアチェンジ能力の高さが現れており、ラスト4F目から13.4-12.2-11.5-11.4という2段階の加速ラップを4角10番手から差し切ったパフォーマンスは3歳離れ。跳びの大きさもあり大箱コースでこそという馬だけに、ここでもう一段上昇できればいい勝負になっても。
[6]⑩ドゥレッツァ(ビュイック)
3歳時にホンコンJCTを32.7の脚で勝っているように、本来はキレる脚をもっているタイプです。春は調子が整わないままで、前走は初の海外遠征で暑さにも強くない中⑤着と恰好を付けました。テンションに配慮してか最終追いはあえての単走も、中距離戦なら折り合いの不安もマシになるはずで侮れません。
[7]⑪カラテ(杉原)
毎回自身の脚は使っているものの限界があり、結果として時計がかからないと間に合わないというタイプ。今回も良馬場の上り勝負が予想されるだけに。
[7]⑫ソールオリエンス(横山武)
前走の天皇賞では前残り展開で33.3の脚を繰り出し、0.4差まで迫っての⑦着と復調気配をアピール。不器用なタイプ故ワンターンがあっているのは確かですが、逆に前半が流れると置いて行かれるのでペースが緩んで追走が楽になりそうなここはチャンスが生まれ得るでしょう。但し馬込みに突っ込めないだけにスローで外を回して届くのかという問題はあり、ペースが速くても遅くてもダメという好走ゾーンの狭さが付きまとうが故。
[8]⑬[外]ファンタスティックムーン(ピーヒュレク)
勝ち鞍はほとんどがドイツ国内でのもので、唯一国外で勝利した3歳時のニエル賞は7頭立て。良馬場がいいのは事実でしょうが、2走前のバーデン大賞も2.28.0(良)となるとやはり5秒は時計を詰めないといけない計算が故。
[8]⑭スターズオンアース(川田)
共同会見で川田Jが指摘したヨレ癖、もたれ癖は3歳時からの課題。うまく併せ馬の体勢に持ち込めれば強いものの、腕っぷしに定評のある石橋脩Jや言わずもがなのトップクラスであるルメール・川田の両Jを以てしても善戦ウーマンを抜け出せていない戦歴がその難しさを物語ります。故に現地でのルメールJのアクシデントで急遽乗り変わりになった前走のドバイシーマクラシックの大敗は致し方ありません(デットーリJが悪いのではなく、乗りなれた騎手から事前に何のコンタクトもないテン乗り外国人騎手になったということ自体がこの馬にとってはマイナス)。直前の動き自体は問題なく、昨年もほぼ似たようなローテで③着ですから長欠明け自体は気にする必要もありませんが、その昨年は10月中旬からコースで負荷をかけていたのに対し今回コース追いは直前の3週のみ。しっかり疲れを取る目的から長い休養となりましたが、その割に追い本数が昨年と比較して少ないとなるとやはり良いころの状態にはまだ届いていないと見るのが妥当でしょう。
<予想>
◎シュトルーヴェ
○チェルヴィニア
▲ドウデュース
△ドゥレッツァ
△ジャスティンパレス
△スターズオンアース
△ソールオリエンス
■京都12R/京阪杯 グレイトゲイナー
森秀厩舎らしく坂路追いの全体時計が速いのはいつものことですが、逆時計とはいえ最後の2Fを24.3でまとめてきたのは昨年のこのレース⑥着時以来。当時も②着のルガルと0.3差だったことを思えば悪くない内容で、前付けしてバテないスピードを活かせる京都コースは向いています。飛ばしていきたい馬を見ながらの位置で上手く捌ければ簡単には止まらないはずで。